「女性主人公」の警察ドラマがいま増えるのはなぜ 演技力に定評 松岡茉優『ギークス』と小芝風花『GO HOME』
そして桜の同僚で、切れ者のバディとして活躍するのが月本真。この役を大島優子が演じる。 ■女性主人公と“僻地もの”の系譜 この2作品からまず気づくのは、女性が主人公であること、しかもその周囲に登場する主要人物たちもみな女性だということである。ここまで中心人物を女性で固めた警察ドラマもかなり珍しい。 女性が主人公の警察(刑事)ドラマが本格的に登場し始めたのは、1990年代くらいからと言える。浅野温子が警視庁捜査一課の刑事を演じた『沙粧妙子-最後の事件-』(フジテレビ系、1995年放送)などは、先駆け的なものだろう。
そして1990年代の終わりには、中谷美紀主演の『ケイゾク』(TBSテレビ系、1999年放送)が人気を呼んだ。中谷演じるのは東大法学部を首席で卒業した新人刑事・柴田純。天才的な推理力を持ち、「あのー、犯人わかっちゃったんですけど」と言ってあっさり真犯人を見つけてしまう。 ただ社会人としては遅刻が多く、風呂にも入らず不潔であるなど変わり者として描かれている。恋愛にも無関心ではないが、上手くいっている感じはない。
このあたりは、『ギークス』の設定に重なっている。推理にかけてはすぐれた力を発揮する3人だが、普段の生活や恋愛においてはむしろ不器用で悩みも多い。そのアンバランスさが、柴田純に似ている。 『GO HOME』のほうにも、『ケイゾク』に似た部分がある。それは、部署の設定である。 柴田純が赴任早々配属されるのは、警視庁捜査一課弐係。未解決事件を捜査する部署である。そう聞くとなんとなく格好がいいが、実際は色々と複雑な事情を抱えたメンバーが集められた吹き溜まり的部署である。
『ケイゾク』と世界観を共有する戸田恵梨香主演『SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~』(TBSテレビ系、2010年放送開始)の未詳事件特別対策係や水谷豊主演『相棒』(テレビ朝日系、2000年放送開始)の特命係もそうだが、警察ドラマには捜査一課など花形部署から外れた部署の活躍を描く“僻地もの”の系譜があり、『GO HOME』などは、そこにさらに一ひねりを加えたものに思える。 ■1990年代、「警察の日常」が描かれ始めた