「罵詈雑言もデマも何でもあり」斎藤知事、ドイツ極右政党、トランプ…ポピュリズムが吹き荒れた2024年。騙されないための唯一の処方箋とは?
感情的な分断を増幅させる装置として、SNSを悪用
日本でも、ポピュリズム的な要素の強い政党のリーダーは “お行儀の悪さ”が目立つ。 「日本保守党の百田尚樹さんの“子宮摘出発言”なんて、通常であれば失脚につながるけれども、そこは許され、れいわ新選組の山本太郎代表も過去にデマや風評被害を広める発言を繰り返していますが、支持者はそれを許容する。立花孝志さんについては……言うまでもありません。テレビやラジオ、新聞・雑誌など既存のメディアに対しては、高潔で慎重な振る舞いが求められ、小さなミスや軽率な発言は厳しく追及され、どこまでも揚げ足を取られるいっぽうで、ポピュリストは“お行儀の悪さ”さえ武器にして支持を集めることができる」 このムーブメントを加速させているのがSNSである。X(旧Twitter)では、既存のメディアや既得権益層だとされる人々の発言に対し、重箱の隅を突くような揚げ足取りが横行している。 一方で、ポピュリストの発言はどんな過激なものでも偽りのない“本音”として歓迎される傾向にある。発言の内容ではなく“誰が言ったか”によって批判や支持の基準が変わる。こうしたダブルスタンダードが、さらなる分断を生んでいる。 「社会全体の感情的な分断を可視化し、増幅させる装置としてのSNSを、無節操なポピュリストたちが悪用しているのは誰の目から見ても明らかです」
私たち一人一人の処方箋
感情的なメッセージやセンセーショナルな主張が優先される言論空間。真偽不確かな情報や明らかな嘘、誇張が一気に拡散され、それが一種のエンターテインメントとして消費されている。 そしてただのエンタメだったものが、実際の選挙結果にも影響を及ぼすようになっている。 ただし、日本のポピュリズムは「まだマシ」だとモーリー氏はつぶやく。 「日本は良くも悪くも“口だけ”文化。財務省や中央銀行、その他行政機関に対する批判はあっても、それを文字通り“壊してやろう”というアクションにはつながっていかない。デモに参加したり、ビラを配るような実行動に移る人も限られている。憤りが、すぐに行動に移らないんですよ。でもアメリカでは、銃を持って集会に行くし、車を何百キロも走らせてデモに参加したりする。国民性として暴走し始めたら、止まらないところがある。それに比べたら、日本はまだ“ブレーキ”が利いている社会なのかなとは思いますね」 ポピュリズムは単なる政治運動ではなく、社会構造や市民感情を映し出す鏡。モーリー氏の指摘は、現代社会が抱える根本的な課題を浮き彫りにしている。 現代ではトランプ氏をはじめ、右翼的な思想が席巻しているが、言わずもがな60年代の反権力闘争では、左翼的な思想がポピュリズムを支えていた。 時代により形を変えるポピュリズムを冷静に捉え、事実に基づいた議論を進めるために、すべきこととはなんだろうか。 「私たち一人ひとりが、SNSで流れる情報を批判的に読み解き、その上で既存メディアから発信される情報も、無批判に信じることはやめ、常に真実とは何かを冷静に考えていく力を持つことではないでしょうか。要は、嘘を嘘だと見抜ける人になること。結局、処方箋はそれしかありません」 文/モーリー・ロバートソン氏
---------- モーリー・ロバートソン(もーりー ろばーとそん) 日米双方の教育を受けた後、1981年に東京大学とハーバード大学に現役合格。1988年ハーバード大学を卒業。タレント、ミュージシャンから国際ジャーナリストまで幅広く活躍中。 ----------
モーリー・ロバートソン
【関連記事】
- 【画像】「対立候補は極左」「反日」「洗脳されてる」斎藤知事支援者のデマ投稿についに捜査のメス…「PR会社に監修頼んだ」重要証拠の存在
- 【画像】〈立花孝志氏・市長選落選も〉「選挙は一番金がかからないPR。出続けます」来年は南あわじ市長選、千葉県知事選にも照準
- 【画像】<新党結成は?>「まるで芸能人のライブ」15分間の街宣活動から見えた「石丸マジック」の正体――熱狂はいかに作られたのか?
- 【戒厳令騒動】期末試験を翌日に控えた高校生までも国会議事堂前に…軽率な戒厳令で国民の支持を失った尹大統領を待つイバラの道
- トランプ圧勝の背景…Z世代男性を取り込んだ「意外なSNS活用」とは? 再選で真価が問われる石破首相の”交渉力“