「冠水道路を走る車は大丈夫なのか?」ゲリラ豪雨、線状降水帯で注意!廃車や命の危機も…危険な理由を自動車ジャーナリストが解説
毎年、酷暑続きで、温暖化が進む日本列島。亜熱帯化説まで飛び出すほどで、それに伴って増えているのがゲリラ豪雨や線状降水帯などによる大雨。気温が上がれば地表の水分や海が蒸発して、それが降ってくるというのが簡単な仕組みだけに、劇的に温暖化が改善されれば別だが、今後も増えることはあっても減ることはないだろう。 ⇒【関連写真】「対向車のハイビームがまぶしい!」急増中の理由は? “暗闇の無灯火運転”も減らない……気になる最新事情を解説 昭和のころの夕立ちなどという生ぬるい感じではなくて、突然、台風並みと言っていい大量の雨が降るのも珍しくなくなっている。そこでニュースで目にするのが道路の冠水だ。アンダーパスなどの極端に低いところは水が溜まりやすいのはわかるが、道路も住宅地も丸ごと水浸しになってしまうで油断ならない。
目安になるのはマフラーの出口
ここで気になるのが、冠水路を突っ切るクルマたち。雪をかき分けるラッセル車の如く、水を盛大にかき分けながら列をなして進んでいく。これは大丈夫なのかというと、結論からいうとダメ。停車していて、みるみる間に水かさが増えてきて逃げようがない場合を除いて(移動の努力は必要)、あえて自ら冠水路に飛び込むのは厳禁。少し前、アンダーパスで水没してそのまま亡くなってしまったというニュースがあったほどで、生命を脅かすこともある。また無事生還できても大切な愛車はそのまま廃車になる可能性は高い。 まずクルマはどれぐらいの水深まで走れるかというと、目安になるのはマフラーの出口。ここより上に来ると、排気ガスが出なくなってエンジンが停止してしまう可能性が高まるのだ。ちなみにマフラーの出口は大人の膝よりも低いところにある。さらに水位が高くなり、エンジンが被ってしまうぐらいになると、エンジン内部に水が入って破損するので、こうなると基本的に廃車だ。 ただ、水位がマフラーよりも上になってしまっているのに、そのまま走れている映像をよく見かけることもある。それは、勢いがついているので排気ガスは排出されているだけで、なにかの拍子に停止すればそこでおしまいだ。止まってしまったら、ドアを開けて避難すればいいと思うかもしれないが、水圧でドアを開けるのは困難。さらに電気系がやられるのでロックしていれば解除はできなくなるし、エラーが出てロックされてしまうかもしれない。 そうこうしているうちに水は車内にドンドンと入り込んでくるし、ボンネットの中、足まわり、フロア下など各部が水浸しになっていく。そもそも溢れている水は土や砂などが混ざった不純物だらけの汚い水なわけで、車体や部品の細かいところに入り込んだらどうなるのか想像は付くだろう。後日、除去するというのはほぼ無理だ。 極言してしまうと、クルマは1mmにも満たない薄い鉄板を組み合わせたただの箱。そこに大量のコンピュータと電子機器、配線が付いているわけで水に強いわけがない。それでも車内にいると、囲まれているから大丈夫と勘違いしてしまうのは心理学的にも証明されている。日本人はそもそも自分に限ってそんなことはない、と思いがちな国民性でもある。それゆえ、冠水に突っ込んでもグイグイと進んでくれるだろうと思ってしまうし、後続車からのプレッシャーもあって突き進んでしまう。 命、そしてクルマが大切なら、手前で止まったり、回避したい。あっという間に水かさが増して逃げられなかったというのはあるにしても、みすみす自分から突っ込んでいくようなことはしないほうがいい。
文・撮影/近藤暁史
MonoMaxWeb編集部