東京都は0.99と過去最低の出生率! 岸田政権は若者の苦しみがわかっていない
---------- 少子化問題が深刻化しているとの認識が広がってきている最中、厚生労働省が先週発表した2023年人口動態統計の出生数と合計特殊出生率は国の従来の予測よりも大幅に低く、その認識を一段と深めるものになった。日本経済新聞は一面トップで「出生率1.20で最低 昨年、東京は1割れ 人口減に拍車」といった危機感もあらわの見出しを掲げて報じた。しかし、岸田政権の現在の「対策」は、この問題の根本原因がいまだにわかっていない頓珍漢なものだと、著書『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』の著者で慶應義塾大学名誉教授の大西広氏は警鐘に鳴らす。 ---------- 【写真】株価史上最高値は「労働者の生活苦」の上に生まれたバブル
少子化が止まらない理由がわからない政府とマスコミ
6月5日に厚生労働省が発表した昨年の出生数と合計特殊出生率は世間を驚かせ、少子化の深刻さを認識させる結果となった。出生数については当初75万9000人と伝えられていた速報値が72万7000人へと大幅に引き下げられたほか、合計特殊出生率も2022年の1.26から23年の1.20へと大幅に下がったからである。 政府は昨年、岸田総理を議長とする「こども未来戦略会議」を何度も開催、「異次元の少子化対策」というキャッチフレーズで「まずは今年からの改善を目指す」と張り切っていたが、その「実績」がこの一層の少子化の進行となっているのである。厚生労働省発表の翌日6月6日の日本経済新聞も「これまで66兆円もの少子化予算を投入しているのにどうして?」という感じの記事を書いているが、ポイントをはずした「対策」に効果がないのは当然である。この少子化は多くの若者が結婚したり、子供を作ったりできないような貧困な状態におかれているのが原因である。私はそのことを示すために昨年『「人口ゼロ」の資本論』という書物を出した。その点を理解できない「対策」に効果がないのは当然である。 たとえば、政府は来年度から「第3子以降の子どもの高等教育の無償化」を計ろうとし出しているが、これは子供を持てる家庭、また3人の子供と一緒に住める程度の家に住んでいる家庭に対する補助金でしかなく、出生数減の最大の原因である貧困層にはまったく目が向いていない。こういう対処療法的な「対策」ではなく、たとえば消費税の全廃とか、非正規労働の正規化とか、最低賃金を2000円にするとか、そうした社会の根本的な転換なしにこのトレンドは逆転できないのである。 したがって、この視点からすると、政府の「少子化対策」とは、そうした根本的転換をしないがためのパフォーマンスにすぎないこととなる。「やってる感」をかもし出すがためのパフォーマンスに騙されてはならない。