【遺産総額3,000万円】70代の父に続き、後妻まで死去…後妻の親族の「相続放棄宣言」で、50代姉妹が直面した〈父の遺産が手から離れる〉まさかの事態
後妻の相続人に「相続の権利」を譲渡してもらえば…
その話を聞いて慌てたのは、筆者の事務所の提携先の司法書士です。 「お相手の妹さんに相続放棄されてしまうと、お父さんの財産が宙に浮いて、手の届かないところに行ってしまいますよ」 再婚相手の妹が「姉の財産はいらない」といって家庭裁判所に相続放棄を申し立てると、相続放棄は実現しますが、妹が放棄した先の相続人となる、後妻の親や祖父母は、すでに亡くなっています。すると、妹から先の相続人は誰もいない状態となってしまい、遺産はだれにも相続されず、そのまま宙に浮いたかのような状態になってしまうのです。 「相続放棄したいといっている後妻さんの妹さんから、相続権を佐藤さんに譲渡してもらいましょう。佐藤さんは後妻さんの相続人ではありませんが、後妻さんの妹さんから権利を譲渡してもらうことで、自宅不動産の権利を相続することができるのですよ」 そうなれば、父親の自宅の名義をすべて佐藤さんすることが可能になります。 司法書士の子のアドバイスから、佐藤さん姉妹は、再婚相手の方の妹に「相続放棄」ではなく「相続分の譲渡」をしてもらうよう、急ぎ交渉をすることになりました。
どのような手続きが最適解か、状況を見て慎重な判断を
後日、司法書士から接触して説明をしたところ、先方は了承し、すんなりと手続きが完了しました。 佐藤さん姉妹は、いずれも自宅を保有していることから、父が暮らした家の名義を佐藤さんに変更したあとは売却し、2人で分けることになりました。 相続分の譲渡は、相続人以外にも行うことが可能です。また、譲渡されるものは、相続の権利のすべてとなります。 世間的には「相続しない=相続放棄」と思われがちですが、実は、相続をパスした人の先に相続人がいないと、パスされた財産はあたかも宙に浮いたかのように、誰も手出しができない存在になってしまいます。 その点、相続放棄でなく「相続分の譲渡」であれば、譲渡された人が諸々の手続きを行うことが可能です。相続の現場では、どのような手続きが最適であるのか、状況を見て判断することが重要です。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。 曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士 ◆相続対策専門士とは?◆ 公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。 「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
曽根 惠子