<上海だより> 路上の椅子が生み出す緩やかな公共空間
上海、と聞いた時にやはり多くの人は高層ビル群のイメージを思い浮かべることが多いかと思います。もちろん、高層ビルの開発も盛んな事は間違いないですし、それがいわゆる上海を象徴付けていることも確かです。一方で、中心部でも一本道が変わると、とても緩やかな空気感が漂っている街でもあるのが上海です。
路上に置かれた椅子から生まれるコミュニケーション
上海の市街地を歩いていると、路上でよく目にするのが椅子です。といっても行政によって設置されたベンチではなく、一人がけの古い椅子が路上に無造作に置かれているのです。これらは近隣の住人や商店の人たちが個人として所有している椅子ですが、常に固定の位置に置いてあります。 晴れた日には、おばあさんが座っていたり、時には椅子が2つ以上置いてあり数人で井戸端会議をしていたりもします。中国人は基本的に見知らぬ人と会話をすることも抵抗がない人が多く、通りがかりの人とのコミュニケーションが生まれることもあります。
麻雀やトランプ、お茶を楽しむ人たちも多い
椅子からさらに発展し、テーブルも外に出し麻雀やトランプなどのゲームをする人たちもいれば、茶具を持ち出して友人とお茶を飲むおじいさんたちもいます。これは郊外や田舎の風景というわけではなく、大都会上海の中心部でも日常的に見られる風景です。また、このサークル活動のような集会は、路上だけではなく公園でも展開されています。
急速な都市化の隙間に混在する地元感は維持できるのか?
上海万博などを経て急激な発展を遂げた上海ですが、やはり万博時の生活ルール統制などに関して地元の人からは不満の声が聞こえてきます。中国に限らず日本や世界中同じかもしれませんが、基本的には緩やかな生活を求めているのです。これを単に後進国の残り香とみなすことは簡単かもしれません。 しかし、単純な都市化の転末が味気ない冷ややかな都市生活だとすれば、このような路上空間に広がる公共性を残しながら大都市として成長していくというのも、今後の都市開発においては重要となるかもしれません。