能登半島地震から4か月 輪島市町野町出身のシナリオライター・藤本透さんが見つめる“ふるさと”の今
そのような家の中で、被災者自身が、ヘルメット、安全靴や手袋といった充分な装備もなく、片付けをしなければならない状況は二次被害にもつながる危険性があり、非常に心配しております。 自宅避難を続けていた方の話では、夜、静かなところにどこからか凄まじい音が聞こえてくるときがあるそうです。「何の音だろう」と外に出てみても、街灯もなく真っ暗なので何も見えません。朝になって改めて見てみると、きのうまで建っていた家が倒壊していたそうです。 こうした新たに倒壊する家屋の話は、町野町だけでなく、奥能登地区の至るところで聞かれます。そうならないうちに、あるいはそうなってしまった後も、家財などを救出したくても、被災者だけで進めるには、保管場所の問題なども含めて、多くの方が困っていらっしゃいます。 2007年の能登半島地震とは異なり、大型連休に子どもや孫などの親族が、連泊で実家の片付けに来られない状況です。それは、奥能登地区には宿泊場所が限られており、その多くが休業したままだからです。 同じ要因が、二次避難者が地元に戻れずにいる状況を作り出しているように感じられます。家を片付けたくても、避難所などに泊まることもできず、日帰りでしか作業することができないのです。 また、公費解体の申し込みも難航しています。曽祖父の時代から名義変更などの書き換えがなされておらず、先祖代々の家屋に住み続けている人が多くいることが浮き彫りになっています。 輪島市の水道復旧率は、5月2日の時点で約88.7%。ただ、これは本管復旧をベースにしているため、個々のご家庭で水道が使えているかというと、そうではありません。 家庭内漏水を直すための業者さんは順番待ちで、仮に蛇口から水が出て使えるようになったとしても、下水道や浄化槽が復旧していなければ、トイレはもちろん、お風呂さえ使うことができません。 輪島市内中心部では4月上旬に上水道がほぼ通水したということで、自衛隊の入浴支援が2か所から1か所に集約され、徒歩で入浴支援に通うことができなくなったり、入浴を控えるようになったりしてしまった方も多くいらっしゃいます。