燃える家に4回突入「おじいさん助ける」 郵便配達中の男性に感謝状
3日昼過ぎ、郵便局員の多田嘉一郎さん(37)は徳島市応神町でバイクで郵便配達をしていた。「あれ? 何だろう」。150メートルほど先に炎が見えた。「取りあえず行ってみよう」 【写真】「責任はとる、行って!」 子ども54人守った保育所長 木造2階建ての住宅の窓から炎が出ていた。お年寄り3人がホースの水で消火活動をしていた。避難させようと考え、「危ないので離れましょう」と声をかけた。だが近所の70代の男性が「家の中に消火剤がある」と裏口から屋内に入った。5分、10分と待っても出てこない。「このままでは命の危険がある。自分が男性を助けなければいけない」 1回、2回と家の中に入ったが、煙の勢いが強くて目とのどが痛くなり、暗くて男性を見つけられなかった。借りたタオルで左手で口をふさぎ、右手でスマホのライトを使い、3回目の挑戦をしたが途中で断念。4回目の突入で、ついに暗闇の中で男性の両手をつかむことができた。つかんだまま裏口まで誘導し、ようやく男性を外へ連れ出した。 市消防局によると、この火事で木造2階建て住宅2棟が全焼したが、男性にけがはなかった。 市東消防署の松本弘之署長は24日、多田さんに感謝状を贈った。兼田詳三副署長は「もしも多田さんがいなかったら、男性は逃げ場を見失い、命の危険があったかもしれない」と語った。 多田さんは「炎と煙がすごくて、とても怖かったけれど、『おじいさんを助けなければいけない』という思いしかなかった。もしも同じような場面にまた遭遇しても、人を助けられるようにしたいです」と話した。(森直由)
朝日新聞社