90代姉妹、1世紀住んだ家を突然「立ち退き要求」され…斡旋された「3,150万円のマンション」を半ば強制的に購入。自治体と弁護士にしてやられた“衝撃のからくり”
長年住んできた家を、マンションを建てるなどの理由で開発業者等に突然、「立ち退いてくれ」と言われた場合、その決断は大きな負担となります。特に、高齢者にとって住み慣れた土地を離れることは精神的にも身体的にも大きな労力を伴います。さらに、信頼すべき弁護士や専門家から思わぬ裏切りを受けたら、どうでしょうか。本記事では、後見制度の問題に取り組む「後見の杜」代表の宮内康二氏の著書『認知症になっても自分の財産を守る方法 法定後見制度のトラブルに巻き込まれないために!』(講談社)より、90代の姉妹が開発業者から立ち退き要求を受け、その後に起きた衝撃的な事例を一部抜粋・編集してお届けします。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング…10万世帯当たり事件件数<司法統計年報家事事件編(令和3年度)>
90代女性、長年住んだ家を突然「立ち退いてくれ」と言われ……
90代のFさん姉妹は、生まれてこの方、東京都目黒区に住んできました。土地も建物も借りものですが、そこで生まれ育ち、二人で力を合わせて生活してきました。 ある日、マンションを建てるから立ち退いてくれと開発業者から言われました。立ち退きたくないFさんは目黒区に相談し、ある弁護士を紹介されました。 弁護士事務所に行くと、「賠償金をもらって立ち退くなら弁護を引き受ける」と言われ、それは自分の本望ではないため、依頼をしませんでした。 その後も、開発業者は執拗(しつよう)に立ち退きを要求してきます。Fさんは改めて弁護士に相談し、相手とのやり取りをとりあえず引き受けてもらうことにしました。
家を手放した途端、マンションを斡旋してきた弁護士の“正体”
結論から言うと、数ヵ月後賠償金をもらって、Fさん姉妹は1世紀近く住んだ家を手放すことになってしまいました。半年前に300万円かけて張り替えた屋根も無駄となりました。 弁護士は、もらった賠償金でマンションを買おうと斡旋してきました。築50年、40平方メートル、10年間の借地権付きの物件で、価格は3,150万円でした。弁護士からのファックスを見ると、「早くしないと売れてしまう」とFさんを急かすような内容です。調べたところ、その弁護士はその物件を扱っている不動産屋の顧問であることが判明しました。自分の関係会社をもうけさせるための斡旋だったのです。 その弁護士に促され、Fさんはお金を払い、弁護士と任意後見契約も結びました。亡くなったら遺産を目黒区に遺贈するという公正証書遺言も作成しました。生きている間は弁護士がもうけ、亡くなったら目黒区が利益を得る仕組みにまんまとのせられたとも言えるでしょう。 おかしいと思い続けていたFさんは知り合いに相談し、公証役場へ行き弁護士に促されて作った任意後見契約の解除と遺言の撤回を行い、弁護士と縁を切りました。90歳を過ぎたFさん姉妹の強さや自立心を垣間見る行動として素晴らしいと感じました。