日経ビジネス電子版 は「メディアの価値」と「顧客体験」をいかに両立するのか。編集長が語るリニューアルの裏側
リニューアルで目指した「完読率」と「経営者層比率」の向上
分島:メディアならではの難しさはありませんでしたか。 長井:メディアは随時コンテンツが更新されますし、UIUXを変更するにも組織の運用体制が直接関わってくるので、すぐに変えられる部分とそうでない部分があります。加えて、これはメディアというより日経BPさんの特徴かもしれませんが、関係者一人ひとりのこだわりが強く、文字数制限や要約機能を実現する際も記者のみなさんのモチベーションに配慮するなど、細やかな調整が必要でした。 でもその分、こちらの提案にも熱量を注ぎ真摯に向き合っていただき、経営層の方がインタビュー現場にまで足を運んでくださったこともありがたかったです。 分島:一般的なメディアのリニューアルと言えばトラフィック数やユーザーの反応で評価することが多いと思いますが、今回は「顧客」へのチェンジ。KGIやKPIなどの指標はどのように設定されたのでしょう。 分島 翔平/DIGIDAY[日本版]編集長。2018年8月に株式会社メディアジーンに入社し、DIGIDAY[日本版]編集部に所属。2022年6月より編集長。 原:最終的なゴールに設定したのは「解約率」です。有料会員の解約率をどれだけ下げられるのかを目的にしました。一番の解約理由は「読みきれない」なので、KPIは「完読率」を上げること、そしてコア顧客である「経営者層比率」も重視しました。 リニューアルに先立ち、昨年9月にはオーディエンスエンゲージメントスコア(以下、AEスコア)の変更を実施。これをどう設定するかで記事の評価が大きく変わるわけですが、具体的にはPVやUUの比率を下げ、経営者層比率・完読率・コンバージョン数などを重視したAEスコアを記者にフィードバックすることで、日経ビジネス電子版が進むべき方向を提示しました。 分島:リニューアルして2ヵ月ですが、現段階の手応えは? 原:解約率はある程度の期間を見ないとわかりませんが、新規契約は順調に増えています。記事下の評価投票が活性化するなど変化の兆しを感じるなかで、何より変わったのは記者の意識です。月に1回、AEスコアランキングの表彰や勉強会を実施してきた成果がようやく現れてきて、どうすればAEスコアが上がるかを考えるようになり、フィードバックループが回りはじめました。 書き手はできるだけ多くの人に読まれたいので、以前は有料の鍵を外してほしいと頼まれることがありましたが、今はもうそんなことはありません。自分たちのターゲットは誰なのか、我々のメディアビジネスはどのように成り立っているのかという認識を共有できていると思います。
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