25歳のやり投げ女王・北口榛花の素顔。世界を転戦するバイリンガル、ライバルからも愛される笑顔の理由<RS of the Year 2023>
世界を転戦するバイリンガル。拠点を移してチェコ語を習得
――北口選手は英語に加えてチェコ語も堪能ですが、語学は海外生活の中で自然と身についたものなんですか? 北口:チェコでも田舎のほうに住んでいるので、英語をしゃべれる人が滅多にいないんです。レストランでも英語のメニューがなかったので、自分で少しでもしゃべれるようにならないと、買い物もできないし、レストランにも行けないんですよ。コーチが言っていることも、自分自身で理解するのと、人に通訳してもらって教わるのだと、理解度が違うんですよね。やり投げを知らない人に通訳してもらうと意味のわからない日本語になってしまうし、チームメイトに通訳してもらうと、その選手の主観みたいなものが入ってしまって、本当の意図がわからなくなることもありました。あと、チームメイトとコーチが話している時に明らかに自分の名前が出ているのに、良いことなのかそうでないことなのかもわからないのが怖くて。最初は必死で盗み聞きしていたんですけどね(笑)。 ――それは気になりますよね(笑)。チェコ語は特に習得が難しい言語と言われますが、今は不自由なくコミュニケーションが取れているんですか? 北口:そうですね。ただ、ほとんど会話や音で覚えているので、まだ読み書きがちょっと怪しいんです。チャットなど、文章でやり取りする時に(セケラックコーチから)「間違ってる、そうじゃない」と言われることも。綴りが少し違うだけで、全然違う意味になってしまうんです(苦笑)。 でも、ヨーロッパを転戦するようになってから、英語のようにパッと聞いても何語かわからない言語って、本当にたくさんあるんだと知りました。たとえば、チェコ語ってポーランド語とかと似ているんですよ。だから、ポーランドで試合をする時などに似ている言葉や単語があると、少しわかるような気がして楽しいです。 ――それは、複数言語をしゃべれる人にしか得られない感覚ですよね。 北口:そうかもしれませんね。この間、ポーランドで検定員のおじちゃんたちと会話をしていたんですが、向こうはポーランド語で、私はチェコ語でしゃべっていて、だけどちゃんと通じ合えていたんです。その時はコーチもいなかったので、通訳を通さずに意思疎通できたのはすごく嬉しかったですね。