【バレー】アメリカ、女子バレーのプロリーグ Pro Volleyball Federation(プロバレーボールフェデレーション)とは
競技人口の増加
アメリカではバレーボールの競技人口が年々増加していると言われている。高校、大学での女子の団体競技では最も人気があり、特に高校だけの競技者を見れば2017年から40%増加という。2021年にアメリカバレーボール協会はNational Team Development Programというジュニア選手の発掘、育成による持続的な国際競争の向上を目指すプログラムを立ち上げている。しかし、大学バレーが最後でその先のプロのチームがなければ「持続的な」という計画が進まない。大学卒業時にバレーボールをするために海外に行くか、それとも他の職業を選びアメリカに残るか、決断を迫られた選手も過去に大勢いたに違いない。だから国内で継続的な育成を進めていくには、プロリーグの誕生が不可欠であったとも言える。渡りに船というわけだ。 先に述べた短期間のプロリーグ、アスリーツアンリミテッドのインタビューをした時に、何が良かったかという点で、多くの選手がまずは「家族、友人の近くでプレーできる喜び」を挙げ、次に「若い世代に、アメリカでバレーボールのプロ選手になれるんだよ、と言える誇り」を語っていた。そして今回生まれたのが、プロ選手として生活基盤を稼げるバレーボールのメジャーリーグ、プロバレーボールフェデレーションである。今後は若い世代の大きな目標となるだろう。
選手は開幕をどう受け止めているのか
2014年世界選手権金、2016年リオ五輪銅メダルを獲得したアメリカを代表するセッター、Vegas Thrillのアリーシャ・グラス・チルドレス選手に新プロリーグについて伺った。 ―新しいプロバレーボールフェデレーションというプロリーグの印象はいかがですか。あなたのチームVegas Thrillや観客についても聞かせて下さい。 アリーシャ・グラス・チルドレス(以下、アリーシャ):私は、ここアメリカで本当にプロのシーズンを楽しんでいます。プロバレーボールフェデレーションは、女性のスポーツの人気が上がっているという点だけではなく、特にバレーボールがすごく盛り上がっている正に旬を捉えたといえるでしょう。私たちのVegas Thrillのチームはこの機会を本当にありがたく思っています。ここラスベガスのバレーボールコミュニティが私たちのチームのためにしてくれることを目の当たりにして感激しています。皆さんが暖かく迎えて下さり、情報を広めてくれるので、今までスポーツにあまり関心がなかった人たちもどんどん興味を持ってくれるようになりました。みんなに伝染していくようです! ―あなたが大学を卒業した時は、まだアメリカにプロリーグがありませんでした。あなたや大学でのチームメイトが海外でプロ選手になるという事は大変でしたか。 アリーシャ:私が大学を卒業した時は、海外でプレーすることが唯一の道でした。自分の経験したことに悔いはありません。色々な国に行って、その文化に触れ、多くの事を学ぶことができました。だけど、やはり自分の家の近くにいることができるという選択肢もあったら良かったと思います。自分の国で家族や友人のそばでプレーできるという事は本当に素晴らしいことです。また外国人選手をアメリカに迎えることもいい刺激になると思います。 ―国内にプロリーグが出来た事は、結婚や出産後もプロのスポーツ選手というキャリアを続けていきやすくなったのでしょうか。またそれによって、選手寿命も延びていくと思いますか。 アリーシャ:海外でプレーすることに難しさを感じた選手はより早く辞めてしまうと思います。しかし、今、新たな選択肢が出来た事は、確実に選手寿命を延ばすことにつながると思います。一部の選手は、今までも結婚や出産後も続けていくことができましたが、やはり大きな犠牲を伴います。アメリカの中に色々選択があることは、より柔軟にハイレベルの競技生活ができると思います。海外しか選択肢がなければ、私は引退から抜け出ることができなかったでしょう。本当にアメリカでのプロリーグを嬉しく思いますし、長く続いてほしいです。 ―リーグも終盤です。残りの試合をどのように戦っていきたいですか。 アリーシャ:6年間バレーから離れていましたが、こうして戻ってきて私が愛するスポーツをプレーできることを、本当に毎日、感謝しています。私はより良くするために努力をして戦っていくことが大好きです。思っていたような結果が得られていないかもしれませんが、少しでも上に行くように努力して戦って、残り試合でできる限りの成果を得るためにチームを助けていきたいです。 ―日本のバレーボールファンにメッセージをお願いします。 アリーシャ:日本のバレーファンの皆さんは世界で最高の人たちのひとつです。バレーをよく理解していて、敵味方関係なく、ネットを挟んだ両サイドに声援を送ってくれます。それにお気に入りの選手を愛情深くフォローしていると思います。私は日本でプレーするのが大好きでした。そして皆さんが遠く離れていてもチームや選手たちのことを応援して下さることを有難く思っています。 4月18日現在、アリーシャ選手の所属するVegas Thrillは、6勝12敗で7チーム中6位。ブロックの要モリー・マッケージ選手をけがで欠き、苦しい戦いが続いている。しかし、上位2チームは一歩抜き出ているものの、まだ順位が入れ替わるチャンスはある。序盤に後れを取っていたSan Diego Mojoがここにきて4位まで浮上するなど、混戦となっている。最後の追い上げに期待したい。