ウラ・フォン・ブランデンブルク「Chorsingspiel」を(エスパス ルイ・ヴィトン大阪)開幕レポート。2作品を日本初公開
エスパス ルイ・ヴィトン大阪でドイツ人アーティスト ウラ・フォン・ブランデンブルクによる個展「Chorsingspiel」が開幕した。本展は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを公開する「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行われるもの。 ウラ・フォン・ブランデンブルクは1974年ドイツ生まれ。舞台芸術から入り、アートを学んだ。現在はパリを拠点に活動している。フォン・ブランデンブルクは映像技術を用いることで、活人画(衣装を来た人々が一定時間動かず、絵画のような情景を見せるもの)や古典悲劇といった現代演劇以前の形式を復活させることを試みており、好んで用いる図像は19世紀から20世紀への転換点、オカルトへの傾倒から合理主義へと移行する時代と密接に結び付いているという。 いまも演劇の世界に強い愛着を持ちつフォン・ブランデンブルクの作品で重要なのが「垂れ幕」であり、本展でも大きな要素となっている。 会場は日本で初めて展示される2つのヴィデオ・インスタレーションで構成されており、それぞれが異なる幕によって「部屋」のように区切られている。幕の奥にある映像にたどり着くまでの過程は、作品と出会うまでの「序章」となり、鑑賞者の身体が作品の一部になるために必要な儀式のようにも思える。 会場手前にある《Singspiel》(2009)は、ル・コルビュジエによる名作「サヴォア邸」で撮影されたもので、全長62メートルもの垂れ幕と映像で構成されている。 無声映画でありながら音声が付帯する本作品は、フォン・ブランデンブルク自身が作曲し、歌う2曲に合わせて、様々な年齢層の人々が集う家族の食事風景、野外劇場での奇妙なパフォーマンスが描かれている。 作品は1つのシークエンスショットで撮影されており、カメラは空間の中を次々と移動していく。このカメラの動きそのものが、迷路のような垂れ幕の構成に反映されているという。本作では、合理主義によってある種の抑制的な生活を強いるモダニズム建築への批判的な目線も含まれており、サヴォア邸にまつわる史実とフィクションが複雑に絡み合っている。