軟式野球 道科学大高の149キロ右腕・大谷哲也が目指すのは救急救命士
今夏の全国高校軟式野球選手権大会に出場した道科学大高の大谷哲也投手(3年)は、来春から恵庭市の北海道ハイテクノロジー専門学校に進学する。10月の国民スポーツ大会(佐賀)で最速149キロを計測した右腕だが、迷わず第一線から退くことを決断。未練を残すことなく、夢の救急救命士を目指して次のステージに進む。 道科学大高・大谷は白球に別れを告げる。来春から救急救命士を目指す専門学校への進学が決まり、「将来はたくさんの人を助けたい」と意気込んだ。 野球を始めてから13年。握り続けてきたのは軟式球だった。「昔からプロ野球選手になりたいという思いはない。楽しく野球をやりたかった」。中学でも全道大会に出場し、硬式の道内強豪校4校から誘いがあったが「練習がきつそうなのと、(丸)坊主にしたくないというのが一番の理由です」。OBの兄・卓未さんと同じ軟式野球部でのプレーを選択した。 高校でも幼い頃からの信念は変わらなかった。純粋に野球を楽しむことに重きを置いた。甲子園球児のような猛練習を積んできたわけではないが、同校伝統の体幹トレーニングが成長につながった。メジャーのレッドソックスなどで活躍した田沢純一投手の専属トレーナーを務めた久保田昌樹氏から伝授されたメニューを全体練習の3分の1の時間をかけて行い、3年間かけて体幹を強化した。 8月の全国高校軟式野球選手権大会・井原戦(0●1)で“ノーヒットワンラン”。大舞台で好投すると、10月の国民スポーツ大会・興国戦(0●2)で149キロをマークした。道高野連の関係者によると、試合会場の鳥栖市民球場にスピードガンが設置された21年10月以降、球場の最速を更新したという。 軟式と硬式で違いはあるものの、同年代の右腕ではNPBスカウトも注目していた152キロの旭川実・田中稜真、150キロの紋別・池田悠真、巨人ドラフト4位で149キロの北星学園大付・石田充冴らに匹敵する道内トップクラスのスピードを誇る。大台も目前に迫っていたが、大学や社会人などで硬式野球に切り替える選択肢は一切なかった。 卒業後は道内の草野球チームに加入予定で、本格的な競技からは引退する。「国体でやり切った。満足している。でも、いつか(150キロを)出してみたいなというのはありますね」。マウンドで何度もチームを救ってきた豪腕は、救急現場での人助けのために次の一歩を踏み出す。(島山 知房) ◆大谷 哲也(おおたに・てつや)2006年10月23日、釧路市生まれ。18歳。5歳で野球を始め、小学2年時に江別市に転居。その後は大麻チャイルズでプレー。大麻東中では軟式野球部に所属。道科学大高では1年から公式戦で登板し、1、3年夏の2度、全国高校軟式野球選手権大会に出場した。182センチ、70キロ。右投右打。家族は両親と兄、弟。
報知新聞社