相次ぐトラブルや事故はなぜ? 美容業界の内実に迫る 横行する機能偽装 〝知らず販売〟のメーカーも
「いつまでも若さを維持したい」と高まり続ける美容への意識。しかし、一方で契約を巡るトラブルや美容機器による事故なども発生している。取材を進めると、その背景には美容業界の悪しき習慣が見えてきた。美容業界の現状を明らかにするとともに、対策となりうる、ある企業の取り組みについてクローズアップする。(西山美沙希)
脱毛サロン相次ぐ倒産
昨年、大手脱毛サロングループが相次いで倒産した。契約者の多くは先払いした代金が返金されず、大混乱に陥ったことは記憶に新しい。 倒産の原因はずさんな会計処理だった。契約者が前払いしたコース代金を、サロン側は前受金として処理せずに売上として計上。自転車操業が常態化していたことが報道で明らかになった。ただ、実際はそれだけでなく、「資金繰りの悪化を助長させる要因が別にもあった」と、美容機器業界に詳しいジャーナリストは指摘する。 「倒産した多くの会社では、中国製の脱毛機が使われていた。中国製は性能が安定せず、出力が低いものが多い。つまり、何回通っても効果がなかなか現れない。その状況で新規客が増えれば、どんどん予約も取りづらくなる。結果、SNSなどで悪評が拡散し、やがて解約ラッシュに繋がり、返金用の現金が用意できないまま倒産に追い込まれている」と事情を説明する。 さらに、このジャーナリストは「機械の偽装は脱毛に限った話ではなく、エステなど美容業界全体で横行している」と続ける。「中国製の安価な機械を色や外側のパッケージ、名前を変えただけで、日本製として高額販売している業者がいくつもある」と内実を明かす。
葛藤する機器メーカー
一方、明るみになっていく美容業界の悪しき習慣に当初から疑問を持ち、サロンとの信頼関係を軸に成長してきた企業もある。大阪市中央区に本社を置く美容・エステ機器メーカー「ビューティーキャラバン」(沖大作社長)もその一つだ。同社はエステ業界を主軸に、現在では鍼灸院や整骨院などの治療業界やリハビリ、美容医療分野、スポーツ業界にも機器販売の触手を伸ばしている。 「長年、美容業界にいるが、機器を取り扱っていると言うだけで怪しまれることは少なくない。ただ、その気持ちもよくわかる。サロンをカモにする販売メーカーが存在する以上、警戒するのも仕方がない」と打ち明ける。 「頑張って開業にこぎつけたのに、用意した資金で粗悪な機械をつかまされたオーナーを、僕自身もたくさん見てきた。なんとかしたい思いが強かった」と、10年前に起業した。 美容機器メーカーとして沖社長が取り組んだのは2つ。一つは、「効果を実感できる本物の機械のみを扱うこと」。もう一つは「購入後のサポートとメンテナンスに力を入れること」だった。 沖社長は地道な活動を続けつつ、世界中の展示会にも自ら率先して足を運んだ。そんなときに巡り合ったのが仏製の高周波機器「ウィンバック」だ。後に日本で唯一、「ビューティーキャラバン」が日本総代理店を務めることになる機器との出合いだった。