債券利回り急上昇に不吉な既視感、株価が急落した2022年や23年と酷似
(ブルームバーグ): 債券利回りが急上昇し、かつて株価下落を招いた状況に近づいている。このため、株式相場に下落余地が出てきたとの見方が浮上している。
米10年債利回りは8日の取引で、昨年4月以来となる4.7%に達した。9月半ばからほぼ一本調子で水準を切り上げ、その幅は1ポイントを超えた。
この動きは株価が急落した2022年、23年と酷似している。今回はただ、上昇一服といった程度にとどまり、利回り上昇が続けば株価が下げる余地が生じている。
クリスチャン・ミューラーグリスマン氏らゴールドマン・サックス・グループのストラテジストは、「株式と債券利回りの関係は負の相関に戻った」と指摘。良好な経済データなしに利回りが上昇を続ければ、株式相場にはマイナスだとの見解を示し、「債券が下落する一方で株式は比較的底堅く推移してきたが、経済成長にとって悪いニュースが出れば、調整が入るリスクは短期的にやや高くなったと考えている」と論じた。
長期債利回りの上昇幅が大きいために利回り曲線がスティープ化したが、これは米国の財政およびインフレへの懸念を示唆しているとストラテジストは指摘。予想インフレであるブレークイーブンインフレ率(BEI)ではなく、実質利回りが動きの大半を占めている。
金融政策への思惑から、今後いっそう動きが激しくなる可能性もある。市場は既に米国の利下げ見通しを修正し、7月までに織り込まれている利下げ回数は0.25ポイント1回に過ぎない。米国時間8日午後に公表される連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(昨年12月17、18日開催分)で、政策見通しに関する手がかりが得られるかもしれない。
今のところ、物価下落と底堅い景気、段階的な金融緩和が同時進行する「ゴルディロックス(適温相場)」シナリオの実現を市場は確信している様子だ。とりわけ米国株について、大半の投資家は極めて強気で新年に入った。トランプ次期政権の政策や関税によるインフレ圧力は軽視されている。