■第3局　手筋の一着で攻めをつなげる

7月1日　名古屋市中区の「万松寺」

▲山崎隆之八段　△藤井聡太棋聖

午後6時46分、100手で藤井棋聖の勝ち

藤井棋聖が5連覇に王手をかけて迎えた本局。後手番の藤井棋聖が一気に決めるか、山崎八段が持ち味の〝山崎ワールド〟で1勝を返すか。

山崎八段は第1局に続いて相掛かりに誘導した。中盤、藤井棋聖がノータイムで飛車交換を選択。判断の難しい局面となったが、直後の58手目、藤井棋聖は△7七歩（図）と打った。

玉、金、銀、桂の焦点に放つ「たたきの歩」で、手筋の一着だ。藤井棋聖は「先手の応手がいろいろあるが、どう応じても（後手が）攻めをつなげていけると感じた」と解説する。言葉通り、この一手が厳しく、藤井棋聖がペースをつかむ。進んで、「△2四玉（92手目）まで逃げ出せて、玉の安全が確保できた」と、勝勢を判断した。

藤井棋聖は「第3局もこちらが攻勢を取る展開だった。悩ましい局面が多くあった。終盤、落ち着いて指すことができた」と振り返った。

本局前、叡王のタイトルを失い、8冠から7冠に後退。タイトル獲得の連続記録も22で止まった。しかし、対局では失冠を引きずる様子もなく、「6月に叡王で敗れてしまったこともあったので、棋聖戦で防衛して、永世棋聖という資格を得ることができてうれしい。永世称号を取られた方は偉大な人ばかり」と、素直に喜んだ。

5連覇達成後の記者会見で、「永世棋聖」と揮毫した色紙を披露した。そして、こう語った。「永世称号は長期的な活躍が問われるもの。長い目で見たとき、実力を高めて活躍していけるよう取り組んでいきたい」（田中夕介）

■産経ニュースでライブ配信

「ヒューリック杯第95期棋聖戦 藤井聡太棋聖 就位式」（主催・産経新聞社、日本将棋連盟、特別協賛・ヒューリック）が28日、東京都内で開かれます。就位式の模様を産経ニュースの公式ユーチューブチャンネルでライブ配信します。就位式は午後2時から始まります。