疲労の正体とは?半年以上疲れたままだと慢性疲労から病気につながることも。重要なサインを見逃さないで
◆疲労は病気につながるサインである では、私たちはなぜ疲れるのでしょうか。 私たちは酸素を吸って生きていますが、酸素を吸うことで生じる、よくない副産物もあります。それが酸素ラジカルという活性酸素です。 活性酸素は細胞を傷つけます。傷ついた細胞を修復するためには修復エネルギーが必要になります。その修復エネルギーは何かというと、ATP(アデノシン三リン酸)です。 これはミトコンドリアでつくられ、われわれの体を動かす原動力となるガソリンのようなもので、ATPが潤沢にあれば、傷ついた細胞をすぐ修復してもとの状態に戻せます。 しかし体内のATPを使い切って枯渇してしまうと、修復ができない状態になってしまいます。そうするとさまざまな悪い影響が体の中に生じてきます。その1つが疲労です。 疲労を放っておくと、重大な病気を招く可能性もあります。 「たかが疲労」ではありません。疲労は病気につながる重要なサインなのです。 人間の体には大きく分けて、神経系と内分泌系と免疫系という3つの制御システムがあります。この3つが互いに連絡をとりあい、ゆらゆらとバランスをとりながら生活しています。 仮に自律神経のバランスを崩しても、ほかの2つがカバーして時間稼ぎをしているあいだにゆっくり休むことができれば、自律神経の乱れも通常どおりに回復します。 このようにしていつもの状態を保つはたらきを、「ホメオスタシス(恒常性)」といいます。ですから疲労の初期段階で休めば、何ら問題ありません。しかし、休まずにいると今度はなかなか回復できなくなります。
◆疲労を放置すると慢性疲労になってしまう 疲労には、急性疲労、亜急性疲労、慢性疲労の3段階があります(図表2-2)。 急性疲労は1日~数日寝れば回復する程度の疲労です。 亜急性疲労は、寝ただけでは回復せず、疲労感が1週間~数カ月続く状態のことをいいます。 疲労が半年以上続くと、慢性疲労といわれる状態になります。そして、慢性疲労の状態から、慢性疲労症候群を発症することもあります。 「慢性疲労と慢性疲労症候群は同じでしょう?」という方もいるかもしれませんが、正確には異なります。 慢性疲労は疲労の状態を指す言葉です。なぜ疲労しているか原因がはっきりしています。 「激しい運動をずっと続けたから」「このところずっと仕事が忙しかったから」というように、疲労の原因が明確なときは慢性疲労だといえます。 一方で、慢性疲労症候群は立派な病気の一種です。 脳脊髄という中枢系の炎症で、頭痛や発熱があり疲労感が半年以上続きます。 ちなみに慢性疲労症候群という病名は最近、「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」という名称に変わりました。 CFSとは、Chronic Fatigue Syndrome の略です。 慢性疲労症候群だけではありません。疲労はこのほかにもさまざまな体の不調をもたらします。 ※本稿は、『休養学――あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
片野秀樹
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