会社員コスプレ写真家「趣味だからこそ、1枚に込める思いはプロをも超える」
1枚に懸ける思いはプロをも凌ぐ
やがて、クオリティにこだわったコスプレ撮影に没頭していくうち、撮影機材もグレードアップしていった。ニコンD90、D3S、D800、キヤノンEOS 5D MarkIIを経て、現在はEOS 5D MarkIIIとソニーα7 IIを愛用している。どちらも20万円オーバーのハイエンド機だ。 「実はメーカーやカメラには、それほどこだわりはないんです(笑)。その時々で使いやすいカメラを選んでいたら、こうなりました。撮影機材でこだわっているのは、むしろレンズですね。単焦点の標準レンズが好きなので、50mmの明るいレンズを何本か使い分けるようにしています」 そうは言っても本業は会社員のイガラシさんにとって、1回1回の撮影は貴重な時間とお金を費やす大事なもの。当然、その撮影機会を大切にしている。 「スタジオ撮影だと、6時間程度は借りて撮影しますので、1回の撮影で休日を1日まるまる使う感じです。ちゃんとしたスタジオなら1時間あたり2~3万円ぐらいかかります。仲間の写真家たちとシェアして使うことが多いので、そのための仲間も必要になります。撮影のためにいろいろ準備したり、撮影後に現像処理をしたりと時間をかけています」 そのため、1枚の作品へのこだわりはプロをも凌ぐのだ。 「被写体が無機質の建築写真と異なり、コスプレイヤーさんは人間なので、関係性を重視するようになりました。(コスプレは)アニメやゲームなどのキャラクターなので、原作のフィルターを通した結果の作品となりますが、そこに撮影者と被写体の人間関係がにじみ出てくるのが写真の面白いところだなと思います」
趣味ゆえに採算は度外視。作品として残すための写真集を制作
コスプレ撮影を行ったら、撮った写真はどうするのか。一般にコスプレイヤーは自作の写真集をコミケ等で頒布することが目的となっている。しかし、実は意外とこういった頒布物のお金の話は知らない人が多い。そのあたりの事情をイガラシさんにぶつけてみた。 「う~ん、ぶっちゃけたところ、趣味でやっている活動なので利益が出るレベルではありません。僕の場合、1種類の写真集を作るのに印刷経費が10万円程度、スタジオ代とか諸々の経費がさらに5~10万円程度です。以前、頒布したレーシングミクの写真集では車との撮影をしており、ロータスエリーゼ、BMW、メルセデスなどの車を借りたので、それだけで10万円ほどかかってます」