和田秀樹「実は一人暮らしの認知症患者ほど症状が進みにくい」…認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと
■認知症の人にこれだけは絶対してはダメなこと 危険を察知する能力、怖いものを怖いと思う感覚も、認知症を発症してからかなりあとの段階まで残りますし、むしろ、危険を回避するための防御反応は高まります。 私はこれまで3000人以上の認知症の方を視てきましたが、徘徊中に転んでしまった人はいても、道で車にぶつかったという人は一人もいませんでした。車にぶつかるのは危険なことだと認識する能力は残っているからです。 私が高齢者医療の現場である浴風会病院に勤務していた当時は、年間100例ほどの解剖が行われていましたが、その結果判明したのは、85歳を過ぎると、脳にアルツハイマー型の神経変性がない人は一人もいないということです。 つまり、認知症は誰もが罹患するもの。病気というより老化現象の一つです。高齢になって体の機能が衰えるのと、何ら変わりはありません。 そして老化であるがゆえ、その進行速度もゆっくりしたものですし、個人差があります。 一番避けたいのは、認知症だからといって悲観的になり、家に閉じこもってしまうことです。頭と体をしっかり使うことで、認知症の進行は遅らせることができます。 ですから認知症になったときこそ、意識的に以前と変わらない生活を送ることが重要です。無理に行動を制限するほどに、進行は早まってしまいます。 私自身、医師としてたくさんの高齢患者さんを診察してきましたが、一人暮らしをしている人ほど、認知症の症状は進みにくいことがわかりました。それは、いろいろな家事をするなかで、必然的に頭を使うからです。日常生活を送るというのは、思っている以上に脳を働かせるものなのです 認知症の方が一人で暮らすのは不可能なのでは? と思う方もいるかもしれませんが、先に述べたように、認知症になると防御反応が高くなるため、多くの場合、食事の用意なども自分でしっかり行います。食べることは自分の生存に関わることだからです。 認知症になっても、できることはたくさんあります。その「できること」を失わないように、残存機能をとことん活用し続けることが大切なのです。