福原愛さんの視点「早田選手の今後の競技人生においても大きな経験になる試合」
「パリ五輪・卓球女子シングルス・3位決定戦」(3日、パリ南アリーナ) 女子シングルス3位決定戦で、第3シードの早田ひな(24)=日本生命=は第4シードの申裕斌(韓国)に4-2で勝ち、銅メダルを獲得した。2012年ロンドン五輪団体銀メダリストで、16年リオデジャネイロ五輪団体銅メダリストの福原愛さんは「これからの競技人生においても大きな経験になる」と分析した。 ◇ ◇ 早田選手があそこまで戦えたことに、五輪は気力の部分が大事だということをあらためて感じました。卓球はメンタルの部分が大きく左右する競技ですが、五輪ともなると気力の部分が本当に大切です。そして練習で積み重ねてきたものが申裕斌選手より多かったことも、メダルにつながった要因だと思います。 1ゲーム目はミドルのフォアで取るところのボールを狙われがちだったり、全体的に少し打点が遅くなる感じがありました。強気になって攻めるほど、打点も速くなっていくものです。 ただ、3ゲーム目をジュースで取ったことが大きかったです。サーブの変化も多くなってきましたし、積極的にサーブ、レシーブから攻める展開も増えました。ラリーになったときの一本一本の質も、どんどん上がった印象を受けました。 私は現役時代に右肘を手術したので、利き手を痛めるつらさはよく分かります。利き手にテーピングをすることはアスリートにとっては嫌なことで、足にテーピングをするのとは訳が違って、感覚が変わってきます。 痛くてテーピングをして試合に出たことがあるのですが、気になってはがしたりしました。うまく伸びなかったり、曲がらなかったり、回転をかけるときに気になるのです。大きく両サイドに飛ばされたときに、少し突っ張る感じもします。 選手たちは試合前には爪も切りません。何グラムという差で感覚が変わってしまうからです。テーピングをするということはそれなりの痛みがあったり、必要性が無い限り、利き手にすることはほとんどないので、それだけの理由があったのだと思います。 私はリオデジャネイロ五輪で3位決定戦を経験しました。負けましたが、勝ちきるにはいかに冷静になって、自分を客観的に見られるかだと考えています。メダルがかかっているなどという邪念をどれだけ取り払って、試合に没頭できるかだと思うのです。早田選手はあれだけの試合ができたことで、これからの競技人生においても大きな経験になるでしょう。 団体戦に向けて、ベストの状態に持っていくことだけにフォーカスしてほしいです。ケガのことだけを考えて、しっかりと体を休めて、切り替えてもらいたいです。一番の願いは、チームとしてこのままの勢いでいくこと。悲願の打倒中国を見据えて、初戦からしっかりと準備をしてほしいと思います。