東レ・AGC…グリーン水素需要を狙う、重要部材「膜」で貢献
AGC イオン交換膜投資、北九州に設備新設
水素関連商材を成長ドライバーと位置付けるのがAGCだ。24年度から3カ年の中期経営計画は高成長分野とする戦略事業に、半導体、環境・エネルギーなど向けの高機能素材である「パフォーマンスケミカルズ」を組み込んだ。同分野の対象製品の一つが、PEM型水電解装置向けのフッ素系イオン交換膜「FORBLUE(フォアブルー)Sシリーズ」だ。 17年から顧客への販売を行ってきたが、イオン交換膜への加工は原料となるポリマーの製造を行う千葉工場(千葉県市原市)内でのパイロットプラント規模にとどまっていた。グリーン水素への需要が世界的に高まる中、AGCは1月に、北九州事業所(北九州市戸畑区)でのプラント新設を決定。約150億円を投資し、26年6月の稼働開始を予定する。 膜の生産能力や同拠点の雇用規模は非公開とするが、AGC化学品カンパニーの加藤真FORBLUE事業部長は「水素の活用が社会に浸透した際には、北九州事業所(の生産能力)では全然足りない」規模だと言及。国内外の顧客をターゲットとし、30年度に約300億円の売り上げを目指す。九州のみならず、欧州など海外での生産も検討する。 4月には産業技術総合研究所(産総研)との間で、欧米で主流の高圧環境下でのPEM型水電解技術に関する共同研究を始めた。膜の強度が求められる高圧環境下でも、電気抵抗の低さを両立できるポリマーの開発などにつなげ、他社との差別化を図りたい考えだ。グリーン水素の本格的な利用に向けて各社の技術力や供給体制の強化が重視されそうだ。