バーで楽しむ「ザ・ゼロプルーフ」とは? 新しいノンアル追求 ザ・ペニンシュラ東京
■「モクテル」から「ザ・ゼロプルーフ」へ
鎌田さんがPeterバーでノンアル飲料の充実に着手したのは2008年ごろ。「ホテルのバーはお酒を目的に立ち寄る人ばかりではありません。実際に、宴席の合間や食事の前後に利用されるお客様の中には、お酒以外の飲み物を召し上がる方が多いことに気がついたのです」。ご自身がアルコールを受けつけない体質ということもあって、がぜんメニュー開発に力が入りました。 それから10年あまりの後、ノンアルが一躍脚光を浴びる事態が発生します。新型コロナウイルスの感染拡大です。飛沫感染防止のためにアルコール摂取を控える意識が高まり、アルコールゼロのカクテル「モクテル」が注目され、認知を広げました。 ただ、鎌田さんはその現象にちょっとした違和感を覚えました。「『モクテル』という呼び名は、カクテルのまねごと、という意味あいが強いですね。私は、それは何か違うと感じました。それよりも、ノンアルのカクテルを1つのカテゴリーとして確立したいと考えたのです」 そこで2021年に、モクテルに代わる言葉として「ザ・ゼロプルーフ」という単語を考案します。「プルーフというのはアルコールの度数を示すほかに、証明という意味もあります。つまり度数ゼロの飲み物という立ち位置を明確にしたのです」。バーで提供するノンアル飲料のセレクションは、すべてこの呼び名にしました。 今日ではノンアルの梅酒やワインなどカクテルの材料が増え、作り手としての楽しみも増えたといいます。「アルコールが入らない分、ボリューム感をどう出すのか。そこが難しく、また面白いところです」。いま、Peterバーは趣向を凝らした15種類ほどのザ・ゼロプルーフを提供しています。 バーの楽しみ方を増やして、より多くの人に知らしめたい――。鎌田さんはそんな志を胸に抱いて、海外の女性バーテンダーを招いたイベントを開催するなど、さまざまな試みに挑戦しています。勉強熱心で知識も話題も豊富。金曜日にはDJが入り、R&Bやジャズが流れるPeterバーで、鎌田さんと飲み物談議を交わせば、ほろ酔い気分に似た心地よい時間を味わえるでしょう。 文:THE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。