元X・TAIJI 没後10年 ロックミュージシャンの非業の死を振り返る
ひるがえって2011年7月11日、デルタ航空298便(サイパン行き)のビジネスクラス。着陸間際、TAIJIさんは同乗していたA氏と激しい口論になり、窓をたたき、席を蹴ったという。機内で騒ぎを起こしたとして、空港で地元当局が逮捕。その後起訴されたが、14日夜にサイパン警察の拘置所で自殺したと報じられた。当時の日刊スポーツは「関係者によると、拘束先でベッドシーツを使って首つり自殺を図った」と報じている。 警察職員に発見されたTAIJIさんは意識不明のまま、総合病院コモンウェルス・ヘルス・センターに緊急搬送。集中治療室(ICU)に運ばれたが、すでに脳死状態だった。知らせを受けた赤塚さんは17日未明にサイパンに到着、変わり果てたTAIJIさんの姿を目にした。 赤塚友美さん:ベッドに仰向けに寝かされて、白い衣服がはだけた胸には、丸い装置がいくつもつけられていました。鼻に透明な呼吸用の管が通され、おなかにはデスクライト。そして片方の足首には手錠がかけられたまま。顔が腫れていて、口のまわりには黒い粘着テープの跡のような小さなものがべったりついていて、それを取ってあげようと、看護師さんにぬれタオルをもらって、TAIJIさんの顔を拭きました。なかなか取れなくて、そのひとつひとつを手でつまんでベッド下の小さなゴミ箱に捨てたのをおぼえています。 熱帯の夜。静まり返った病院の一室で、生命維持装置だけが鼓動を鳴らす。反応のない彼に、赤塚さんは「もう大丈夫だよ!」と泣きながら声をかけた。しかし、彼女が最も不審に思ったのは、“索条痕(さくじょうこん)”がないことだった。 赤塚友美さん:首つりだと聞いていたのに、それらしき跡が見当たらなかったんです。そのかわり、棒状の細長く赤いアザが、胸のあたりを横切るようについていました。 そのあとTAIJIさんの親族が到着。母親はその点に気づいて、「首に跡がない」と関係者に聞いて回ったが、「知らない」という答えが返ってくるばかり。ドクターから「生命維持装置を外すしかない」という説得を受け、もはやその選択肢しかなかった。結果、婚約者が死因や状況に納得できないまま、TAIJIさんは帰らぬ人となった。