独ロ首脳が電話会談、西側の孤立政策に終止符 ウクライナは反発
[ベルリン/キーウ/モスクワ 15日 ロイター] - ドイツのショルツ首相は15日、ロシアのプーチン大統領と電話会談し、ウクライナからのロシア軍撤退と戦争終結を促した。ドイツ政府報道官が明らかにした。 ショルツ氏とプーチン氏の直接会談は2022年12月以来。 ドイツでは連立政権が崩壊し総選挙に向かう一方、米大統領選では対ウクライナ支援に批判的なトランプ氏が勝利するなど情勢が大きく変化しつつある中、西側諸国によるロシア孤立政策に終止符が打たれた。 ロシア大統領府も、プーチン氏とショルツ氏の電話会談を確認。会談はドイツの要請で行われたとし、プーチン氏はウクライナ戦争終結のためのいかなる合意も、ロシアの安全保障上の利益を考慮に入れ、「新たな領土の現実」を反映したものでなければならないと伝えたと明らかにした。 ウクライナのゼレンスキー大統領は、両首脳の電話会談が「パンドラの箱」を開けたと批判。今後も同様の対話が行われる可能性があるとし、「まさにプーチン氏が長年望んでいたことだ。プーチン氏にとって孤立を弱める上で非常に重要だ」と述べた。 ウクライナでの紛争を「公正な平和」で終わらせる努力を損なうことになるという認識も示した。 これに先立ち、ウクライナ大統領府の関係筋によると、ゼレンスキー氏はショルツ氏に対し、ロシアの孤立状態が緩和され戦争継続につながるとの懸念から、プーチン氏との電話会談を控えるよう警告。「プーチン氏は真の平和を望んでおらず、一時的な休戦を求めているだけだ」とし、電話会談はプーチン氏を利するだけだと述べたという。 先週行われた米大統領選でトランプ氏が勝利したというタイミングで行われたこの首脳電話会談について、ある西側外交官は「これは悪いシグナルだ」と語り、自国がドイツ政府にそれは良い考えではないと伝えたことを明らかにした。 トランプ氏はウクライナ戦争を迅速に終結させることができると述べ、ウクライナに対する西側諸国の財政・軍事支援の規模を繰り返し批判してきた経緯がある。 関係筋によると、フランスのマクロン大統領がプーチン氏と会談する予定はない。 ドイツ政府報道官によると、ショルツ氏はプーチン氏に対し、公正かつ永続的な平和を目指してウクライナと交渉する意思を示すよう要請。ドイツは可能な限りウクライナを支援するという立場も強調した。また、北朝鮮がロシアに派遣した兵士をウクライナとの戦闘に投入することは紛争の深刻なエスカレーションにあたると明確に伝えた。 両首脳は今回の電話会談後も連絡を維持することで合意。ショルツ氏はプーチン氏との会話内容を同盟国やパートナー国のほか、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)首脳に報告する。 ロシア大統領府によると、プーチン氏はウクライナ戦争終結を巡る合意について、紛争の根本的な原因に対処するため、ロシアの安全保障を考慮し、ウクライナの領土の一部をロシアが実効支配しているという「新たな領土の現実」を踏まえたものでなくてはならないと伝えた。 プーチン氏が示した見解は6月に表明したものと同一。当時プーチン氏は、ウクライナがNATO加盟方針を放棄し、ロシアが制圧したウクライナの4地域の全てを引き渡せば戦争は終結すると表明した。ウクライナはこうした条件は降伏に等しいとして拒否している。 プーチン氏はこのほか、ロシアとドイツとの関係の「前例のない悪化」について言及。原因はドイツの非友好的な行動にあるとの考えを示した。同時に、エネルギー問題を巡り、ドイツが関心を示せば取引の検討に応じる用意があると伝えた。 ロシアのペスコフ大統領報道官は今回の会談について「ウクライナを巡り詳細、かつ率直に議論した」とし、「かなり大きな見解の相違があるが、対話が行われたということ自体が極めて肯定的だ」と述べた。 独政府高官によると、両首脳は約1時間にわたり会談した。 ショルツ氏はプーチン氏との電話会談前にゼレンスキー氏とも会談しており、プーチン氏との会談後にもゼレンスキー氏と再度会談する。 ショルツ氏がこのタイミングでプーチン大統領と電話会談を行った理由は不明。ポーランド国際問題研究所のダニエル・シェリゴフスキー氏は「総選挙を控える中、ショルツ氏はプーチン氏との対話が国内での自身の立場の強化につながると考えている」との見方を示した。 ドイツでは連立政権の崩壊に伴い来年2月23日に総選挙が実施される。