海外セレブのディープフェイク被害、これからどうなる? セレブとAI技術の行方
YouTubeで公開したディープフェイクのクオリティが高かったため、インダストリアル・ライト・アンド・マジックから仕事のオファーが来たクリエイターもいる。「マンダロリアン」には、シーズン2の最終話に若き日のルーク・スカイウォーカーが登場した。『スター・ウォーズ』シリーズのファンも最初は喜んだものの、オタク度が高いファンの間ではデジタル再現の技術がイマイチという声も上がった。そこで立ち上がった(?)のがディープフェイク・クリエイターのShamookで、『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83’)のマーク・ハミルの映像を使ったディープフェイクとオリジナルを比較させる映像をYouTubeにアップ! その結果、Shamookの技術は現在、『スター・ウォーズ』シリーズの視覚効果を担うILMで発揮されている。
パロディ動画ではない、ディープフェイクによる被害は
多くの人を楽しませるパロディ映像やミームとしてのディープフェイクだと大事には至らないかもしれないが、セレブの映像が悪意のある詐欺に利用されることもあるのだ。前述したテイラーのディープフェイク被害というのは、ル・クルーゼの鍋をファンにプレゼントするという映像。偽テイラーが「同社のワケあり調理器具セット3000個が発売できなくなったので、ファンに送料のみでプレゼントする」とファンに語りかける内容で、自宅でル・クルーゼの鍋を愛用しているテイラーがブランドのアンバサダーになったのかもと思わせるが、全て詐欺。ファンから金や暗号通貨を騙し取るためにセレブの肖像を利用しているに過ぎない。
トム・ハンクスは昨年秋、ディープフェイク版トム・ハンクスをデンタル・プランのコマーシャルに使用されて、激怒。すぐに自身のインスタグラムで「AIバージョンの僕がデンタル・プランの宣伝をしているけれど、僕は一切関知していません」というメッセージをアップしている。昨年の全米俳優協会のストライキでは役者のAI肖像の使用も焦点のひとつだった。映画会社が協会員の肖像や声、演技が本人の同意なしに、あるいは報酬なしに使用することに関する保護を提唱していたわけだが、ハンクスのAI肖像を無断使用したのは保険会社を装った詐欺! イメージ失墜の恐れもあるわけで、俳優もたまったものではないだろう。