トランプ政権、在日米軍駐留費の負担増迫る可能性 日米同盟重視も個別交渉で国益拡大か
【ワシントン=坂本一之】米大統領選で当選を確実にした共和党のトランプ前大統領は、日米同盟の重要性に理解を示しつつ、米国の支出を軽減するため在日米軍駐留経費の大幅な負担増を日本に迫る可能性がある。個別交渉で事態を打開しようとする姿勢は同盟国、敵対国であっても同じだ。米国内にアピールする国益拡大に向け、日本もその交渉相手となる。 【世界地図でみる】トランプ氏復帰、世界中が注視 ウクライナへの軍事支援に変化も 中国「不確実性増す」 ■前回は駐留経費1兆円超を要求 トランプ氏は、核兵器を含め急速な軍備増強を図る中国や、米国を射程に収める大陸間弾道ミサイルの開発を進める北朝鮮の脅威に対抗していくため、1期目と同様、日米同盟の強化を進めていくとみられる。 一方でトランプ氏は大統領在任中、同盟国の負担増を掲げ、日本に対しても在日米軍駐留経費の負担額を引き上げるよう要求したことがある。 トランプ氏の大統領補佐官を務めたボルトン氏は回顧録で当時の4倍超となる年約80億ドル(約1兆2200億円)を求めたと明かしている。 この交渉は2020年大統領選でトランプ氏が敗れたため立ち消えとなったが、27年度からの負担額を決める新たな特別協定の交渉の際に「トランプ氏は日本に負担増を求めるだろう」と日米関係筋はみる。また、石破茂首相が掲げる日米地位協定の見直しを求められれば、新たな提案をする機会と捉え、日本の責任や負担の拡大を要求する可能性もある。 ■「米の利益拡大」は一貫 ロシアのウクライナ侵略を巡っては、来年1月の大統領就任前にプーチン露大統領との交渉などを通じ「戦争を終わらせる」考えを訴えている。バイデン政権が日欧などと実施してきたウクライナ支援の政策転換もあり得る状況だ。 トランプ氏が個別交渉で米国の利益拡大を図る姿勢は一貫していて、日本との貿易も「公平ではない」と主張してきた。 親密な関係を築いた安倍晋三元首相との間でも、日米が主導した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を離脱し、対日貿易赤字を問題視して2国間の貿易協定を要求した。 20年には米国産の牛豚肉や乳製品の関税を引き下げる日米貿易協定を発効させている。2期目も米国内産業の輸出拡大に向けて日米貿易協定の交渉第2弾を呼び掛けるとみられる。