強いがゆえに混迷レース。広島のMVPは誰?
25年ぶりの優勝へマジック「1」となった広島で、果たしてMVP(最優秀選手)は誰になるかの議論が沸騰している。MVPは、セ、パの両リーグが、各地区の運動記者クラブに依頼し、全国の新聞、通信、放送各社に所属し5年以上プロ野球を担当している記者の投票にとって選出されるもの。投票は3人を1位、2位、3位と順位づけて連記する方式で1位に5点、2位に3点、3位に1点が与えられ、総得点で最多の選手がMVPということになる。 MVPを選ぶ定義は決まっていないが「優勝に最も貢献した選手」が選ばれるケースが主流。過去、6度あった広島の優勝の際には、いずれも広島から選ばれ山本浩二氏が2度、江夏豊氏、衣笠祥雄氏、北別府学氏、佐々岡真司氏が選出されている。25年前の1991年は、17勝9敗0S、防御率2.44で最多勝、最優秀防御率の2冠を取った佐々岡氏がMVPだった。 2016年の有力選手は、目下、98打点で打点王の新井貴浩(39)、守備においても大きな貢献をした菊池涼介(26)、新エースとしてハーラートップタイの14勝を挙げている野村祐輔(27)、“神っている”と呼ばれ2試合連続サヨナラ本塁打をマークした鈴木誠也(22)の4人だ。 地元記者の評価が高いのは、菊池。テレビ解説では、野村謙二郎前監督が「僕なら菊池をMVPに推す」と推薦していたほど。打撃成績も、打率.323、13本、54打点、91得点と素晴らしく、安打数は、セパで最多。ここ一番での勝負強さは、新井に負けていない。 連敗で迎えた8月7日の巨人戦でも、9回の土壇場に同点アーチ。8月24、25日の巨人戦でも、連夜のヒーローとなり、25日の巨人戦でも、また9回に同点にする値千金のタイムリーを放った。この巨人2連戦で優勝を確信させたと評価する人が少なくない。そして何より、その球界ナンバーワンの守備力でチームの危機を何度も救っただけでなく、ピッチャーに安心感を与えた。菊池、田中、丸で形成されるセンターラインの安定度も広島カープを25年ぶりVへ驀進させた要素のひとつだろう。 新井の印象度は、全国区だ。今季は通算2000本安打も記録。チームの4番として打点タイトルのトップを走っているだけでなく、得点圏打率が.357と高い。またチームリーダーとしてチームの若手を引っ張ってきた“目に見えない“チームへの貢献度がある。前述した過去の例を見るとMVPに選ばれた選手は全員がタイトルホルダーである。タイトル奪取がMVP条件だとすれば、新井が最有力の一人ということになる。 元千葉ロッテの評論家、里崎智也氏が推すのは、新エースの野村。