建築系学生によるアイデア・事業構想のプレゼンイベント「sprout ~プレイスティックstudent edition~」開催!既に実社会とつながり始めているその内容レベルに驚いた
7番手は、「おちば」。寄席の画一的な空間ではなく、落語の演目から高座、木戸、屏風といった舞台空間をデザインし、噺(はなし)の世界観に没入してしまうようなアーティステックな落語会を実現しようとしている。今年のGWに落語「愛宕山」で実施する予定。おちばは、街なかに落ち葉がひらりと舞い落ちるようにして都市に生まれる“落ち”の“場”なのだとか。 以上が、7チームのプレゼンだ。200秒なので、とにかく展開が速く、文系脳の筆者には苦手なAIの話ではついていくのが難しかった……。とりあえず、筆者が理解できた範囲なので、不正確かもしれない点を了解いただきたい。
優勝者はオーディエンスの投票で決定!
「sprout」の特徴は、プレゼンの優勝者をイベントに参加したオーディエンスの投票で決めること。投票フォームを見たら、それぞれのプレゼンを5点満点で評価していく形式で、多く得点したチームが優勝ということのようだ。
まず、イベントを共催する一般社団法人HEAD研究会賞が紹介され、「Pochant」の馬場さんが射止めた。そして、優勝者は、「NESS」の森原さん・須藤さんに決定。前回のスタートアップの優勝者(LIFULL ArchiTech 北川啓介さん)からトロフィーが贈呈された。 ゲストコメンテーターの國枝さんは、各プレゼンの感想の際に何度も、東急でできないか、東急沿線でやらないかと話していたので、閉会後にイベントの感想を聞いた。まず、レベルの高さに驚いたという。「マネタイズはこれからだと思うが、自分たちの情熱から純粋に提案しているのが社会人にはない強みだと感じる。使う側の目線に立っていけば、さらに発展すると思う」ということだった。
レベルが高いのは、インキュベーション・プログラムを経た7チームだから
プレゼンのレベルが高いのには、実は理由がある。登壇者は、一般社団法人ASIBAの第1期プログラムの卒業生で、2カ月間の都市建築領域に特化したインキュベーション・プログラムを経た7チームだからだ。 では、「ASIBA」(Architecture Studio for Impact Based Action)とはなにものか、代表理事 二瓶雄太さん(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻修士課程)に聞いた。 二瓶さんは建築の中でも解体の研究をしていたが、解体がテーマとなると扱わなければならない領域は広く、社会に出ていく必要があると感じていた。そんなとき、同じテーマを研究していた早稲田大学の森原さん(NESSの登壇者の一人)と知り合った。建築系学生が思い描く提案を、提案に留まらずに社会に実装するには仲間と環境が必要で、ないなら自分たちでやったらよいとASIBAを立ち上げた。幸いなことに、まだ実績もない中で、清水建設や日建設計といった日本の建築界のビッグ企業がリターンを求めずに応援してくれた。 参加者と伴走しながらそれぞれの提案を実装する力を育てる、ASIBAのインキュベーション・プログラムでは、毎週課題を設けて展開していく。そこにはゲストとして、東京R不動産のディレクターを務める林厚見さんほか、パートナー企業から第一線で活躍する人や東京大学の准教授などが、レクチャーや学生のプレゼンの講評を行っている。それを受けて学生たちは仮説検証を重ねて、最後に最終講評会を行った。と、ここまでやったチームによるプレゼンなので、レベルが高いわけだ。 学生たちのホンキ度もかなりのものだ。閉会後に優勝したNESSの須藤さんに話を聞いた際に、このプロジェクトをライフワークとして取り組んでいきたいと話していた。学生なので、プロジェクトは将来へのステップとしてとらえているのかと思ったのだが、強い信念で始めてなんとかビジネスにつなげたいと考えていることが伝わってきた。NESSが優勝したが、最終講評会から2カ月たって、他のチームがさらにブラッシュアップしているとも言っていた。 ReLinkの本多さんも、震災で壊れた住宅をなんとか一部でも残せないか、解体が決まったが看板だけでも残せないかといった相談が、人づてに来ているという。すでに構想や提案なのではなく、実社会とつながっているようだ。 こうした経緯から、今回の建築系学生によるプレゼンイベント「sprout ~プレイスティックstudent edition~」は、スタートアップを支援し「sprout」を運営するバ・アンド・コー株式会社と、HEAD研究会、ASIBAの3者が共催となっている。プレゼンを聞いた筆者は、学生の情熱に大いに元気をもらった気がする。建築業界の未来が、なんだか楽しみになってきた。 ※掲載写真はすべて筆者が撮影したものです。
山本 久美子
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