若者の自己肯定感を上げたい~デコ棺桶デザイナーが「入棺体験」で伝えたいこととは
入棺体験が若者の自己肯定感アップ、希死念慮の軽減につながる
これまでに450人以上が参加した入棺体験。アトリエでの入棺体験では、単に入って写真を撮るだけでなく、「ワークシートに自分のことを書き込み、ご自身に弔辞を書いてもらい、実際に棺桶のふたを閉めてしばし自分と向き合う」というフローが設けられている。 ワークシートには、「自分の最期はどんな最期か」「あなたの葬儀に来てほしい人は誰か」「読んでほしい弔辞はどんな内容か」、そして「亡くなった後、周りの人から『どんな人だった』と言われたいか」を記入する。そのシートをもとに、布施さんが故人を偲び、本人の書いた弔辞を読み、ふたを閉める。その後3分間、棺の中で自分自身と向き合う時間を設ける(希望により延長可能)。 「棺桶のふたをパッと開けると、皆さん入る前と全然表情が違うんです。表情に覇気がなく、どんよりしていた方が、生気を取り戻し、イキイキとした表情に変わっていていつも驚かされます」 体験者からはさまざまな感想が寄せられるが、多いのは「こんなに褒めてもらったのは初めて。自己肯定感が爆上がりした」というもの。入棺したことで、それまでの「自分にとって嫌でつらい人生」をいったん終わらせ、誉め言葉をもらいながら棺の中で自分自身と向き合う時間を持つことで、生まれ変わったような気持ちになるという。 一時的に外界と遮断されることで強制瞑想状態になり、「やりたかったけれど忘れていたこと」を思い出す人も多い。 「普段はネガティブな感情に支配されていても、棺の中で『一度死を経験した』という心理状態になることで、やり残していることに気づく人が多いのだと感じます。例えば以前、いわゆるブラック企業で昼夜なく働き怒鳴られ続け、『自分には生きている意味なんてあるのか』と疲弊し切った20代の会社員がいらっしゃいましたが、入棺体験後は憑き物が落ちたように明るい表情になり、『やりたかったことがあったのに、今までなぜか忘れていました。ようやく思い出せたので、会社を辞めると決めました』と話してくれました。ネガティブな感情に支配されていると、やりたかったことだけでなく、辞める、逃げるという選択肢すら見失ってしまいますが、棺の中ではそんな感情が取り払われ、純粋に自分の思いと向き合えるようになるのだと思います」