「厚さ30センチ必要なのにたった3センチ」トンネルに空洞 国交省が建設業者に『行政処分』40日間の公共工事の営業停止 建設業法違反『粗雑な工事…虚偽報告』
“工事のエキスパート”とされた現場所長 不良発覚も「どうすることもできない」部下に丸投げ
今回公表された調査報告書では、施工業者へヒアリングした内容などについても公表されました。そこでは、現場所長は「トンネルの測量や計測管理システムを使ったことがなく、部下に任せきりで、測量結果については把握していなかった」「厚み不足に気づくも、局所的なもので大丈夫と勝手な判断をした」「今更どうすることもできないと思い、作業を継続した」などと言及されていました。 浅川組によりますと、工事を取り仕切っていたのは、15件以上トンネル工事を担当していた現場所長。経験も豊富で、いわば“敏腕社員”とされ信頼を置かれていたということです。 しかし、浮き彫りになったのは経験豊富と言うには程遠い実態でした。社内でのヒアリングでは、『覆工コンクリートは、化粧コンクリートのようなもので厚さが足りなくても問題ない』と発言、岩盤などの計測に関しても、レーダーなどを用いるなど客観的な計測を行わずに目視のみで『この山なら崩れないだろう』という判断で工事が進められていたということです。 また、こうした一連のコンクリートの厚さ不足などに関する施工不良は現場所長から本社へは全く報告がされていませんでした。報告書の中では、現場所長が『本社に報告をしても社内にトンネルの専門家がおらず、現場任せになるので、自ら問題などを収めないといけないと思っていた』などと認識していたということです。
調査報告書では『コンプライアンス意識の低さが根本的原因』
調査報告書では、今回の施工不良の原因について有識者らは「トンネル施工に関する基礎的知識の欠如に加え、コンプライアンス意識の低さが、深刻な施工不良を発生させた根本的な原因」「社会や公益に対する技術者としての責任を認識していないことも、施工不良の発生原因」などと言及しました。 また、施工不良に気づいた担当者もいたということですが。「所長の判断は絶対」「所長を超えて内部通報はできない」と考え、所長の決定に従わざるを得ない環境だったということです。今回の調査報告書の公表を受けて、浅川組は「真摯に受け止めています」とのみ言及しました。
完成したのに工事は全面やり直し…開通は本来の予定時期の2年後に
今回調査報告書を作成した有識者らは、厚さ不足などに加え、鋼材が本来の設置位置からずれていることなどから、コンクリートを全てはがし、工事を全面的にやり直す必要があると判断しました。施工した浅川組などは、去年12月からコンクリートをはがす工事をはじめ、ほぼ撤去が完了したということです。今後、改めて工事を進めていきますが、完了は来年12月の見込みで、本来の開通時期から約2年遅れになるということです。