パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから7日で1年。日本経済への影響に関しては、エネルギー供給などでの不安は大きくないとされてきた。だが、ガザ情勢が不安定さを増せば、原油や液化天然ガス（LNG）の価格や供給に深刻な影響を与え、世界規模の経済減速につながる恐れがある。 経済協力開発機構（OECD）は9月に公表した経済の見通しで、2024年の日本の実質経済成長率をマイナス0・1％とし、5月の前回予測から0・6ポイント下方修正した。ガザ情勢だけでなく、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮情勢などの地政学的な緊張が続けば投資に打撃を与えかねず、「重大なリスクになる」とも指摘した。 みずほリサーチ＆テクノロジーズは今年、大阪府市の経済動向報告会で「24年のトップリスク」の一つとして、米大統領選や台湾情勢などとともに「中東情勢」を挙げている。原油のサプライチェーン（供給網）が混乱すれば、原油価格高騰につながりかねないと警戒感を示した。 日本向けの原油やLNGの多くは、ガザ情勢で緊迫する紅海経由で輸送されていないことなどから、ガザ情勢が日本経済に直接的な影響を及ぼす恐れは少ないとの見方がされてきた。 だが、ガザでの戦闘が長期・不安定化すれば、エネルギーの供給や価格に重大な影響が出ることは避けられない。世界では地政学リスクが高まっており、経済減速を招く火種がくすぶっている。（井上浩平）