コパ・アメリカ2024でロドリゴはブラジル代表を救えるか サッカー王国の必殺技「タベーラ」の使い手
【ブラジル独特の壁パス「タベーラ」】 ロドリゴが受け持っている「ペレ」のプレーは主に中央突破だ。誰もが担えるものではなく、「タベーラ」のセンスはとくに問われる。 タベーラは「壁パス」を指すが、一般的な壁パスやワンツーとは少し違っていて、そこはブラジル独特で他国にはあまり見られない特徴でもある。 基本的にパスを後追いするように走るので、敵味方で密集化する。その密集をかいくぐるところがタベーラの真骨頂だ。人が密集すれば守備側のほうが有利というのが一般的な考え方なのだが、ブラジルが狙っているのはわざと密集化させて、まとめて置き去りにする突破なのだ。 ブラジルはカウンターアタックが極めて鋭い。しかし、それに固執していない。現在は一般的に縦への速い攻め込みが主流だが、ブラジルは相手に引かれてスペースがなくなることをさほど苦にしない。どこかで密集させてまとめて置き去りにすれば、カウンターと同じ効果が得られると知っているからだ。 多くのチームは相手に引かれて攻撃スピードがダウンすると、なかなか中央を突破できない。相手のカウンターも恐いので、中央でボールを失わないようにU字型にボールを動かしてサイドからの攻め込みを狙う。ブラジルには「ガリンシャ」の攻撃ルートがあるのでこれもやるのだが、「ペレ」の攻撃ルートも放棄しないのだ。
【即興をやれる資質を持った選手がいるか】 ただし、「ペレ」をやるにはそれなりの人材が不可欠である。 密集を突破できるのはテクニックとスピードも重要だが、それ以上に何が見えているか、何を見ているかが決定的で、そのセンスの持ち主が何人いるかでほぼ成否が決まる。ペレとトスタン、ジーコとソクラテスのようなパートナーが必要だ。 長年、セレソンを率いていたマリオ・ザガロいわく、「プランを廃して自由にプレーすること。監督に言われたようにプレーするのではなく、どうプレーするかわかっている選手たちと共にあることが重要だ」。 即興をやれる資質を持った選手を、どれだけ揃えられるかにかかっている。だから、10番タイプを何人も同時起用するといった、他国がまずやらない編成も平気でやってきたわけだ。 何を見るか。タベーラの名手たちは、複数の相手を見ている。 具体的には主に「門」になっている相手センターバック(CB)ふたり。まず、CBのどちらにも捕まりにくいポジションにいる選手にパスをつける。そして「門」の開閉に応じて進入路を決める。閉じれば外、開いていれば間。相手が動く(または動かない)ことで、守れない場所ができるので、そこを通過する。 原理は単純だが、密集していて突破スペースがないなか、数秒先に空く場所をイメージできる選手はけっこう希少なのだ。 最初は「ガリンシャ」だったネイマールは、のちに「ペレ」になった。カタールW杯のクロアチア戦でのゴールはまさにタベーラの神髄。2つのワンツーでど真ん中を破ったネイマールのパートナーは、ロドリゴとルーカス・パケタだった。