職場にいる「能力はあるのに信頼されない人」がおかしている失敗
● 信頼されない人は「仕事の目的」を忘れている 私の身近な話をしてしまいましたが、皆さんのまわりはどうでしょうか。もしかすると上司の顔色ばかりうかがって、やるべき仕事に取り組まない人がいるのではないでしょうか。 ここで私が言いたいのは、上司にアピールするのが悪いということではありません。一生懸命に取り組んだ仕事なのであれば、しっかりとアピールをして評価されたほうがいいですし、そうしないと立場が危うくなってしまうこともあります。 ただ、そういったことと、上司の顔色をうかがうだけなのはまったく違います。あくまで「アピール」は、自分が達成すべきことに必死になったときにすべきことで、アピールそのものが目的になってはいけません。 先ほども言いましたが、そんなアピールで手に入れたものに意味はなく、短い時間で評価を得られたとしても、化けの皮が剥がれるのもあっという間です。 お笑いの世界の目的が「お客さんを笑わせる」ことであるように、ビジネスの世界の目的も「顧客やクライアントを幸せにすること」です。上司を笑顔にすることではありません。加えて、顧客やクライアントを幸せにすることができれば、大抵の場合、上司も笑顔になります。本当の目的を見失わないようにしましょう。 ここからは余談ですが、私が授業をするときに「どれだけお客さんを意識できているか」をたしかめるために生徒に出している要望があります。それは「大きな声を出して」というものです。 大人からすれば馬鹿げていると思う要望ですが、お笑い界では非常に重要な要素です。その理由は明確で、「大きな声を出せないと、劇場の最後列までネタが聞こえないから」です。皆さんもお金を払ってわざわざ劇場まで足を運んだのに、面白い面白くない以前に、ネタが聞こえなかったらどう思うでしょうか。がっかりしますよね。 こういったことをなくすために、お笑い界では「声量」が重要な基礎であるとされています。その声量に対しての要望を出したときに、お客さんを意識できていない生徒は叫ぶような発声方法になります。要するに音量だけ上げればいいと考えるのです。 対して、お客さんを意識できている生徒はお腹にしっかり声を出して、聞き取りやすさを犠牲にしないように声を出します。どちらが劇場のお客さんにとって親切かは言うまでもないでしょう。 もちろん、最終的には要望の意図を説明して、全員に意識を変えてもらうようにしていますが、日頃から「本来の目的」を意識できている人とそうでない人のあいだには大きな差があります。元が優秀だったとしても、意識のところで評価が逆転するなんてこともザラです。我々以上に厳しいビジネスの世界に身を置く皆さんなら、このことはよく理解しているでしょう。 こういった当たり前のことを多くの人が見落としてしまいます。ですが、当たり前のなかにこそ、大事なことは隠れていますので、ぜひ頭の片隅に入れておいていただけますと幸いです。
本多正識