ハチロクが電気自動車に? トヨタ「カローラレビン」のBEV版に乗った!
面白いのは、クラッチをつなぐ時の半クラッチの感覚を出すために「アイドリング」するような仕組みにしてあること。本来、BEVにアイドリングはないのだが、単純にモーターが空回りするようにしてあるらしい。 2速→3速→4速とシフトアップすると、タコメーターの針がアップ・ダウンを繰り返しながら振れていくのがエンジン車っぽくて、BEVであることを忘れてしまいそうになる。この回転数、実際にモーターの回転数を示していて、それに合わせて「4AG」のエンジンサウンドが車内に響いてくる。
音はドライバーの腰下にある2つのスピーカーから出ていて、その音源はエアクリーナを外してスポーツマフラーを取り付けた4AGのものを使っている。アクセルの踏み加減や回転数に応じて変化するよう、サウンドジェネレーターを調教したそうだ。こんなことができるのは、まさにBEVらしいところと言える。 走り自体は軽い車重と適度なパワー、48:52の前後バランス、MTの操作感などがミックスされ、軽快なエンジン車を操っているような楽しさがしっかりと表現されていた。
■クルマ文化を未来につなぐ意義深いプロジェクト 正直にいうと、試乗する前はなんだか「キワモノ」っぽい印象を持っていたAE86のPUコンバージョンモデルだったのだが、実際に乗って関係者から話を聞いてみると、この2台の製作はしっかりと将来を見据えた計画であることが認識できた。 それでは、実際にトヨタがAE86のPUコンバージョン事業を行うとした場合、AE86ユーザーはいくらくらいなら「やってみたい」と思うのだろうか。コンバージョンモデルにKINTOの特選旧車レンタカーで乗った利用者などに聞くと、エンジンモデルなら200万円~250万円、BEVモデルなら300万円前後という声が多いそうだ。
トヨタによると、AE86は1983~1987年の4年間で計13.69万台を販売したとのこと。日本国内には約1.3万台がナンバー付きとして現存している。『頭文字D』の影響もあり、タイやシンガポールなど東南アジアにもかなりの数が輸出され、人気モデルになっているらしい。 もしコンバージョンモデルが商業ベースとして実現した暁には、輸送にお金がかかったとしても「ぜひやりたい!」というリッチな海外ユーザーも出てくる可能性がある。旧車が生き延びる道のひとつとしてだけでなく、クルマ文化を醸成するという意味でも注目のプロジェクトだ。
■ 原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。RJC(日本自動車研究者ジャーナリスト会議)会員。
原アキラ