政府は外国人材受け入れ拡大に動く:移民に近い特定技能2号の大幅拡充を
外国人材活用は日本の潜在成長率に大きく影響
国立社会保障・人口問題研究所が昨年4月に公表した将来推計人口では、2070年の人口は8,700万人と、2023年の推計値1億2,441万人から30%の大幅減少となる。 ただしこの推計は、外国人が増加していくことが前提となっている。2022年6月末時点の在留外国人数は296万1,969人(出入国在留管理庁)だ。この人口推計では、外国人は2022年以降毎年16万3791人増加していく前提である。その場合、2070年の外国人の人口は、約1,082.49万人となる計算だ。これはその時点の推計人口全体の12.4%に相当する。 2022年の人口全体に占める外国人の比率は2.4%である。その比率が約50年後の2070年には12.4%まで上昇する、つまり外国人の比率が現在の50人に1人強から10人に1人強にまで高まることが想定されているのである。 このように、外国人が急速に増加することを前提にしても、日本人口は2070年には30%減少する。外国人の増加ペースが想定よりも緩やかであれば、人口減少のペースはさらに速くなり、日本経済により大きな逆風となるだろう。 2070年までの間に、人口減少によって日本の潜在成長率は年平均で0.48%押し下げられる計算となる。仮に外国人が増加しない場合には0.62%押し下げられる(図表)。 日本経済や国民の生活に強い逆風となる人口減少を緩和するためには、現在意見が分かれるところではあるが、外国人の受け入れ積極化が一つの解決策となるだろう。
鍵は特定技能2号の拡充
政府が特定技能1号を拡充しても、外国人材の確保が進み、企業の人手不足が大きく緩和されるかどうかは明らかではない。 円安進行の影響もあり、海外から見た日本での就労のメリットは低下している。そのため、韓国など他のアジア諸国に人材が流れていっているのが現状だ。「選ばれる日本」を目指して、外国人材確保に向けた制度の見直しを早急に進めていく必要がある。 鍵を握るのは、特定技能2号の大幅拡充ではないか。特定技能1号と2号とでは、熟練度、専門性に違いがあるが、それに加えて、在留期間が1号は最長5年、2号は延長に制限がないことから、事実上の永住が可能となる。 1号は、国内の人手不足を外国人材で埋めるという日本側の都合に基づいた制度と言える。せっかく技能を身に着けても、人手不足が解消されれば直ぐに在留資格を失うのであれば、外国人労働者にとっては魅力的な制度とは言えないのではないか。 また、特定技能1号の枠を拡大し、人手不足が深刻な景気拡大局面での生産活動の天井を押し上げても、それは上方への景気の振れ幅を大きくすることに他ならない。成長率のトレンドを高め、ひいては設備投資の増加を伴う形で、労働生産性と日本国民の実質賃金上昇率を高めることにはならないのである。 そうした経済の潜在力向上、日本国民の実質賃金上昇率向上をもたらすのは、期限なく日本で働くことで長期間の労働力を提供し、また、家族の呼び寄せを通じて消費者の増加、出生率の向上などに貢献する特定技能2号である。 実際、家族と暮らせることを条件にして、働き場所として日本を選択する外国人も少なくないだろう。