マスコミがほとんど報じない「維新代表選」の実態 “大阪主導”に「東京組」不満、万博も重荷に
これに対し、党副幹事長の金村氏は「政策の実現に向け、与野党問わず、政策協議で声を上げていく」と語るなど馬場路線を踏襲する姿勢をにじませた。現執行部には金村氏を支援する動きもあり、今後の論戦を通じて「政治路線を巡る溝の深さ」(同)も表面化する可能性がある。 その一方で、吉村氏の掲げる「身を切る改革」も論戦のテーマとなっている。衆院広島4区選出の空本氏は「地方議員の数を増やすのに足かせとなる。大きく見直していくことが必要だ」と主張。神奈川県知事を務めた松沢氏も「小さな市町村の議員は議員報酬自体が少なく生活ができない」と否定的な考えを示した。
■「全国政党」か「大阪回帰」かでも対立激化 もちろん、論戦の最大のポイントは、引き続き「全国政党化」を目指すのか、創業の地である大阪へ回帰するかという「根本的な政治路線の選択」(党幹部)だ。金村、空本、松沢の3氏は選挙地盤が大阪以外という「非大阪組」だけに、口を揃えて「地方組織の体制強化などによる“大阪偏重”の是正」を訴えている。 さらに、17日投開票の兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦氏を巡る対応の迷走も論争のテーマとなっている。維新は2021年知事選で斎藤氏を推薦したが、パワハラ疑惑が浮上すると、辞職を求める立場に転じた。しかし、維新公認の対抗馬は擁立せず、維新を離党して無所属で出馬した前衆院議員も惨敗したことから、党内には「きちんとした検証が必要」との声が強まっている。
そうした中、代表就任が確実視される吉村氏にとって、代表選終盤の28日に召集される臨時国会や、来年1月召集の次期通常国会での与野党攻防への関わり方が当面の課題となる。「維新より議席数の少ない国民民主ばかりが注目される状況をどう変えるかで、吉村氏の力量が問われる」(政治ジャーナリスト)からだ。 ■「万博」の“赤字問題”も大きな重荷に その吉村氏にとって、次期通常国会以降の党運営の大きな重荷となりそうなのが、同党主導で誘致した大阪・関西万博(2025年4月13日から10月13日まで)。もともと関西財界にも成功を疑問視する声が多く、開催時から混乱が露呈すれば、実質的な主催者でもある吉村氏の責任問題にもつながりかねない。とくに、観客不入りなどで赤字が出た場合は「最終的には政府の協力に頼らざるを得ない」(大阪府幹部)との声が多い。その場合、吉村氏が主張する「自公政権との対決姿勢」が“空証文化”する可能性も否定できない。
自公過半数割れで迷走が続く石破茂政権も、そうした維新の抱える「万博での弱み」を見透かすように、年明け以降に水面下での維新取り込み工作を展開する構えだ。「万博開幕後の集客状況次第で、石破政権が維新との連携問題の主導権を握る事態も想定される」(閣僚経験者)だけに、吉村氏にとって「首尾よく新代表に就任しても、『吉村首相』どころか政治生命の危機に直面しかねない」(同)という厳しい状況が続きそうだ。
泉 宏 :政治ジャーナリスト