ヤクルト・奥川恭伸が3年ぶりの勝利投手の権利 808日ぶりマウンドで5回7安打1失点の好投
(日本生命セ・パ交流戦、オリックス―ヤクルト、1回戦、14日、京セラ)背番号18が1軍のマウンドに帰ってきた。先発投手として、その名が呼ばれると、球場全体が温かな拍手で包まれた。「おかえり」と書かれたボードが敵地で揺れる。ヤクルト・奥川恭伸投手(23)が808日ぶりに復帰登板。左翼席から響く「頑張れ 奥川」コールに背を押され、力強く腕を振った。 【写真】五回を終えてベンチに戻るヤクルト・奥川「すごく緊張しました」 「どういう内容であっても、本当に最後まで諦めずに思いっきり腕を振りたい。それが恩返し。とにかく最後まで頑張りたい」。登板前に意気込んでいた通り、粘り強く投げ抜いた。一回は味方の失策が絡み、1死二塁のピンチを背負ったが、右翼手の丸山和や中堅の西川の好守にも救われて無失点。久々の1軍舞台でしっかりとスコアボードに「0」を刻んだ。 2022年3月29日の巨人戦(神宮)で右肘痛を発症。長いリハビリ生活を余儀なくされた。昨年4月18日のイースタン・リーグ、ロッテ戦(戸田)で実戦復帰を果たしたが、同年7月の練習中には左足首を骨折。1軍復帰を果たせないままシーズンが終わった。今春のキャンプは1軍スタートも、終盤に腰痛を発症。度重なるけがに泣き、復帰が遠かった。 「もうういいやって思うこともあった」。悔しい思いをしながらも、「(復帰が)今じゃない理由がある」。自らに言い聞かせ、〝そのとき〟を目指して鍛錬を積んできた。京セラドーム大阪は2021年11月20日のオリックスとの日本シリーズ第1戦で、山本(現ドジャース)と投げ合い、7回1失点と好投した舞台。縁ある場所で大きな一歩を踏み出した。 この日、敵地では「バファローズ高校」とのイベントが開催され、球場には高校野球に関連した楽曲が流れた。偶然にもイニング間には、奥川が登場曲として使用するOfficial髭男dismの「宿命」が鳴り響いた。「宿命」は右腕が星稜高時代に準優勝した2019年の甲子園大会で「熱闘甲子園」のテーマソングだった。運命のめぐり合わせも右腕の復帰を後押しした。 打線は一回の村上の先制打のあと、三回にもサンタナの2点二塁打などで3点を追加した。奥川は四回に杉本にソロを被弾したが、5回7安打1失点で3年ぶりの勝利投手の権利を持って降板した。