「出席停止措置」はなぜ取りにくい いじめ加害者に必要とされる対応とは
かつては出席停止数が増えていた時代もあった
「教育業界には、『いじめ加害者が登校する』以外の選択肢がない状態です」 こう語るのは、名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授の内田良さん。だが現場の教員は、出席停止措置の有効性を認識していないわけではなさそうだ。
「中学校の教員に調査すると、管理職も一般教員も約半数が『加害者を出席停止にすべき』と考えていることがわかりました」 実際、出席停止措置が「実行されていた」時期もあると内田さんは言う。 「2000年代前半は、校内暴力などの子どもたちの荒れが大きな問題でした。当時はそれへの対処として、出席停止が実際に発令されていました」 では、なぜ学校で出席停止の措置が取られなくなったのだろうか。 「現在の子どもたちは全体的に落ち着いているので、荒れを原因とした出席停止措置の減少傾向には納得感はあります。しかし、毎年いじめの重大事態が多く起こっているにもかかわらず、出席停止措置が取られていない。背景には大きく三つの理由が考えられます。一つ目は学校においては加害者にも教育的アプローチを取らざるを得ないこと、二つ目は加害者の保護者に出席停止措置への理解を得るのが難しいこと。そして三つ目は、捜査権のない教員には事実を特定することが困難なことです。証拠(品)の捜索や差し押さえができない以上、いじめが陰湿化すればするほど実態はつかみにくくなります。実態把握があいまいな状態で加害者に厳しい措置は取りにくいのです」 こうした状況下で、被害者と加害者を引き離し、かつ加害者の学ぶ権利も阻害しない方法として学校がとってきたのが別室登校だった。「被害者が安心できるのであれば別室登校も一つの措置だ」と内田さんは続ける。 「現在問題なのは、深刻ないじめ事案でも出席停止になっていないことです。いじめの内容に応じた指導や措置を用意すべきですが、これまでその点の議論すらなかった。まずはどういう選択肢があり得るかを検討して、整備をしていく必要があるでしょう」