ロシア反体制派 すれ違う「プーチン後」の未来図 “分離独立”か“一つの国家”か
7月末、ロシア人の反政府武装組織幹部らがプーチン政権崩壊後のロシアを議論する会合に参加するため来日した。ウクライナ侵攻を機にプーチン政権の基盤が揺らぎ、「次」を見据えた議論が活発になっているが、参加者や会合の取材からはそれぞれの思惑のずれもみえてきた。(国際部・坂井英人)
■「プーチン後」を議論
永田町の衆議院第一議員会館で8月1日に開催された「ロシア後の自由な民族フォーラム」。プーチン政権崩壊後のロシアの国家像や少数民族の分離独立を議論するもので、ロシアの反体制派組織幹部や少数民族の分離独立派などとともに、複数の国会議員やロシア研究者なども参加した。会合はウクライナ侵攻開始後の去年5月にポーランドで第1回が開かれ、これまで欧米で開催されてきたが、今回、第7回が日本で開催された。
■「今、ブリャートが金を稼ぐ主な方法は戦争で死ぬこと」
会合に参加した少数民族代表らは、ロシア国内で彼らがおかれた窮状を訴え、独立を求める声を次々にあげた。 ブリャート独立運動組織代表 マリーナ・ハンハラエヴァ氏(※ブリャートはロシア中南部・ブリャート共和国などに暮らすモンゴル系民族) 「あなたたちは今、ブリャートの最後の世代を目にしているのかもしれません」 「ユネスコのデータによると、20年後にはブリャート語は完全に絶滅する可能性があります」 「ロシアのオリガルヒは資源豊かな我々の土地を略奪しています。税金も払わず、我々に残しているのは環境問題だけです。モスクワは我々の資源をすべて奪い取り、我々を貧困に追い込んでいます」 「帝国主義的な戦争が起きた際、(ブリャートは)最前線に送られる『生きた材料』のような扱いをされています」 「今、ブリャートが金を稼ぐ主流の方法は何だか分かりますか。戦争で死ぬことです。生まれた時から我々はロシア人と対等な扱いをしてもらうことなく、あらゆるレベルで差別を受けています」
■「侵略止めるにはロシアを数十の国に分割すべき」
バシキール国民政治センター代表 ルスラン・グバソフ氏(※バシキールは主にロシア南西部・バシコルトスタン共和国に暮らす民族で、イスラム教徒が多数派を占める) 「私は(民族の)歴史的な領土があるにもかかわらず、数世紀にわたりモスクワの支配下にある200万人ものバシキール人の一人です。我々は何世紀にもわたって反抗をし、自由のために戦いましたが、世界はそれを無視していました。なぜなら(世界は)ロシアがそのままで存在するべきと思ったからです」 「ロシアは典型的な帝国であり、他の国々の植民地化を進めることで生き延び、領土を拡大してきました」 「この帝国に属していた多くの民族はすでに絶滅しました。他の多くも全滅寸前な状況でもうおそらく救えないでしょう。しかしまだ救うことができる民族もたくさんあります」 「ロシアはウクライナでの戦争に確実に負けますが、(ロシアという国が)変わることはありません。EU(ヨーロッパ連合)もアメリカも全世界も(ロシアを)変えることはできません。他民族や全世界に対しての終わることのない侵略を止めるために唯一しなければいけないことはロシアを数十の独立した国々に分割することです」