10年見て分かった「渋谷ハロウィン」はもう止められない “来ないで”の呼びかけ虚しく…どう折り合いをつけるべきか
東京・渋谷のハロウィンは10月31日にフィナーレを迎えた。今年は、例年以上の厳戒態勢が敷かれたことはご存じのとおり。2014年頃から毎年“渋谷ハロウィン”を視察してきた消費経済アナリストの渡辺広明氏は今回も現地を訪れた。もう、折り合いをつけるしかないのでは、という――。 【写真】結局今年はどうだったのか…2024渋谷ハロウィン&ゴミまみれだった昔の様子 ***
筆者のハロウィンの最初の記憶は、1990年ローソンに入社し、直営店の店長を任された1年目のことだ。当時の小売業は、消費の端境(はざかい)期に当たるこの時期にハロウィン企画に力を入れて集客を模索していた。とはいえ、カボチャ型容器に入ったお菓子の詰め合わせなどの関連商品を仕入れたものの、8割ぐらいは廃棄になったのを覚えている。まだまだ日本人にはハロウィンは早かったのだ。それを考えると、今の盛り上がりと定着は隔世の感がある。 かれこれ10年以上、渋谷のハロウィンを見てきたが、少しずつ、良い方向に向かってきているとは感じていた。2015年頃は、ハロウィン明けの渋谷の路上にはゴミが散乱し、キングコングの西野亮廣さんが“ゴミ回収”のプロジェクトを立ち上げるほどのありさまだった(この企画を潰そうと2チャンネルの住人たちが率先してゴミを拾う珍事もあった)。 ところが近年は、有志のボランティアの方々による清掃が定着し、11月1日のハロウィン明けは、むしろ「1年で渋谷が最もきれいになる日」にもなっていた。ハロウィン時期は外国人観光客の姿をよく見かけ、インバウンド需要の可能性も感じていた。本来の趣旨からかけ離れたコスプレイベントと化したことがかえって面白がられ、外国からの観光客が注目したことも、渋谷ハロウィンが定着した理由のひとつだろう。そこには、日本の治安の良さ、世界の観光地では珍しく路上飲酒が出来る背景があったように思う。
とはいえ、それはそれ、である。 今年は「ハロウィン目的で街に来ないでほしい」と渋谷区長からの訴えがあり、昨年まではハロウィン期の一時的だった路上飲酒の禁止も、10月1日から条例によって通年禁止する措置が講じられた(午後6時~翌朝5時は飲酒禁止)。ハチ公は封鎖され「渋谷は、ハロウィーンをお休みします。」の旗が、センター街にはためいていた。 無理もない対応だろう。一般客のマナーは向上していたといっても、18年のハロウィン直前の週末に酔っ払いが軽トラックを横転させる事件が起きたのは事実であるし、22年には韓国の梨泰院で痛ましい事故も起きた。渋谷の商店街も区の自粛要請に賛同していることを見るに、街としては歓迎できないわけだ。