10年見て分かった「渋谷ハロウィン」はもう止められない “来ないで”の呼びかけ虚しく…どう折り合いをつけるべきか
ハロウィンなんて…と言うなかれ
海外の文化であるハロウィンなんて日本でやらなくても……という意見もわかる。だが、これまでの渋谷を見てきて、日本のハロウィンには、圧倒的な集客力があることも感じている。車やラーメンなど、日本発祥では無いものを進化させて昇華させるのが得意な“日本らしさ”と同様なものだ。この文化を無くしてしまうのは惜しい。飲食や小売業にとっても、年末年始商戦前の端境期であるこの時期に、正しい形でハロウィンが存続することは、ビジネスチャンスでもあるからだ。コロナ禍で落ち込んだとはいえ、今も1000億円の経済効果はあるとされている。そんなイベントと、どう折り合いをつけるべきか。 「来ないで」と言われる渋谷に代わり、池袋はハロウィンの“ポスト渋谷”を目指していそうなフシがある。10月25日から3日間にわたって池袋で開催された「池袋ハロウィンコスプレフェス」は、過去最大となる16.1万人が参加したという。今年で11年目と実は歴史のあるイベントであるものの、例年以上に外国人観光客の姿が目立ったとも報じられているから、渋谷の規制と無関係ではないだろう。 豊島区長もコスプレでイベントに登場し「池ハロは安心・安全なイベントです」とPRしたというから、渋谷区とは対照的な、大歓迎の姿勢である。「まちキレイプロジェクト」として、来場者が清掃活動に参加する地域の取り組みも行われている。きちんと自治体が管理できる形でのハロウィンイベント開催は、ひとつの正解の形だろう。
かなり早くからやっていた「カワサキハロウィン」
また、すでにイベントとしては無くなっているが、1997年のかなり早い段階から「カワサキハロウィン」が開催されていた神奈川・川崎の例も参考にしたい。参加者は本格的なコスチュームを着て仮装の完成度の高さを競い合い、ゾンビやアニメキャラクター、映画キャラクターなど、さまざまなテーマの仮装が楽しめるものだった。子ども向けイベントや飲食ブース、ステージパフォーマンスなどもあり、家族連れから若者まで楽しめるイベントとして、地元民を中心に親しまれていた。 ハロウィンの多様化、そしてハロウィンのイメージの悪化を受け、2021年に終了してしまった。その“イメージの悪化”を招いた最たるものが渋谷ハロウィンだろうが、今こそ、コスプレしてパレードを行うような、比較的安全なカタチで行われていたカワサキハロウィン流が求められているかもしれない。 今年も渋谷には、多くの外国人観光客の姿があった。来年すぐにでも……とはいかないだろうが、地元および規制に駆り出される警察官の苦労を汲んだ形で、渋谷ハロウィンの健全な発展を求めたい。
渡辺広明(わたなべ・ひろあき) 消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。 デイリー新潮編集部
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