押し寄せるインバウンド、足りない人手…コロナ禍の影響が尾を引く屋形船や旅館・ホテル業の苦悶
扶養されている人がパートで働く場合、収入が一定額に達すると社会保険料の負担が生じて手取り額が減る「年収の壁」も立ちはだかる。
中央区のホテル「住庄ほてる」の角田隆社長(55)は、働き手を確保しようと賃上げに踏み切ったが、一部の従業員が、「時給が上がると『年収の壁』のせいで、手取り額が減ってしまう」として就業時間の短縮を申し出てきたという。
結果的に人手不足に拍車がかかり、社長自らフロントや清掃の業務を担っている。角田社長は「業務を徹底的に効率化し、常にギリギリの状態で営業している。他の宿泊施設の経営者と会っても、人が足りないという話ばかりだ」とため息をつく。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、20年に928万人だった都内の生産年齢人口(15~64歳)は30年をピークに減少に転じ、50年には20年比6%減の870万人と、労働者全体が減っていく見通しだ。
中央大の阿部正浩教授(労働経済学)は「首都東京の人手不足は日本経済へ与えるダメージが大きく、中長期的に経済成長率を押し下げる恐れがある」と指摘。「都は企業の人材確保を支援するとともに、高齢者や女性も活躍できる職場作りなどを後押しする必要がある」と話す。