保育士を志す事件記者「バイエル」「はないちもんめ」に挑む 10代の同級生が支えに
種類がたくさんあってよくわかりません。親切な女性店員さんにあれこれ相談し、録音機能付きのものを買い求めました。なんと3万6千円とな。セブンスターが60個買えます。多大な出費です。しばらくたばこと酒を控えねばなりませぬ。外れ続けて幾星霜なれど宝くじは買い続けます。 厄介ごとに挑む際、形から入る悪癖があります。楽器店からの帰途、本屋さんに立ち寄りました。短大では音楽理論も学びます。しからば楽譜の読み方や記号の意味を入門書で押さえておこう。 「かんたん」、「よくわかる」、「いちばん親切」の文字が表紙に大書された本を数冊買いました。 現実逃避のふらふらはまだ続きます。 さっさと帰宅して電子ピアノで指定曲の練習をせんかい。 本屋さんは新たな発見との出会いの場です。目的の実用書だけ入手して、そそくさと出るのはもったいない。『音楽の基礎』(岩波新書)が目に止まりました。著者は作曲家の芥川也寸志さんです。ぺらぺらとめくると音符や記号の絵がたくさんあって、索引も付いている。 む? 「表情記号」なるものがあると書いてあります。 「気楽に」、「愛情をもって」、「敬虔に」、「野性的に」……。 曲に魂を吹き込む記号が数多あるそうです。子どもに弾いて聴かせる日に備えて読んでおこうっと。出費が増えちまいました。 ■卒業までの課題は64曲! 2022年4月11日の月曜日、第1限がピアノ授業の初日でした。 2年間で習得しなければならない曲目を記した「進度表」を渡され、くずおれそうになりました。1年時にバイエルや幼児唱歌計44曲、2年時にマーチや幼児唱歌、バイエルなど計20曲で合格点を取らないと卒業させません、と。 バイエル? ドイツの強豪サッカーチームがピアノとどんな関係が。いやバッハさんやベートーベンさんを生んだ国ゆえ何かあるに違いない。現実から目を逸らそうとする胸の内を見透かしたように、担当教員がおっしゃいます。