日産、栃木工場のゲストホールを19年ぶりに刷新 ものづくりの先端技術を発信
日産自動車は、栃木工場(栃木県上三川町)のゲストホールを2005年の開設以降、初めて全面改装した。黒を基調とした配色や、室内中央の円盤状の照明が特徴だ。日産の「電動化」をイメージしたという。製造工程を伝えるパネルだけでなく、製造現場を体感できるようなコンテンツなども用意した。このゲストホールを通じ、日産の先端技術を伝えていく。 1968年操業の栃木工場は6年後の74年から工場見学の受け入れを始め、地元・栃木の小学生を中心に社会科見学の定番コースに。これまでに243万人以上が工場を訪れた。2005年からは栃木における同社のブランド発信拠点としての役割も担ってきた。 これまでのゲストホールは、栃木工場で生産する「GT-R」をはじめ内燃機関車のパネル展示が中心だった。今回のリニューアルでは、電気自動車(EV)「アリア」をはじめとする電動車の生産工程を伝える施設に改装した。日産は、「リーフ」で先駆けたEVやシリーズハイブリッド技術「eパワー」を持つ。見学者は電動車の生産技術をパネル展示だけでなく、改装に合わせ新たに加わった体験型展示を通じて理解を深めことができる。 栃木工場は、日産の次世代生産技術群「ニッサンインテリジェントファクトリー(NIF)」を21年から導入した。NIFは、同じ生産ラインで異なるパワートレインを組み付ける「SUMO(パワートレイン一括搭載システム)」をはじめとする新たな生産技術の総称で、国内外の各工場で展開を計画している。改装したゲストホールは、日産が持つこうした最先端の生産技術を紹介していく。 展示では「プレス」「車体溶接」「塗装」「組立」「検査」の5つの工程を紹介する。例えば、プレス工程では、プレス工程の加工前後のアルミ板を展示し、強度の違いを感じられるようにした。他の工程でも同様に触れながら理解できるよう、展示内容を工夫している。 日産は9月26日、ゲストホールで式典を開催した。テープカットには、五月女峰行工場長と上三川町の星野光利町長、栃木県の鱒渕繁義産業労働観光部次長らが出席。地元販売会社からも栃木日産の小平雅久社長と日産プリンス栃木の澁谷浩昭社長が参加した。 式典後、取材に応じた五月女工場長は「NIFをアピールしていけるチャンスだと捉えている。近隣の方だけでなく、来ていただいた皆さまに工場を身近に感じてもらえるようにしていきたい」と抱負を語った。 FR(後輪駆動)車を主に手掛ける栃木工場は、「セドリック」や「グロリア」「ステージア」「フーガ」などの生産を担ってきた。現在の年間生産能力は19万3千台。GT-Rのほか「フェアレディZ」「スカイライン」を生産している。アリアの生産ではNIFも導入した。改装したゲストホールを通じ、日産が培ってきた電動車の生産技術を広く発信していく。 (織部 泰)