【バスケ】全ての苦難は「下剋上」に通ず 初優勝の広島ドラゴンフライズ、10年に及ぶ茨の道で培った“逆境への強さ”
観客の少なさ、経営難、B2、選手兼コーチ… 苦難続きの10年
逆境こそが、チームを強くするー。 創設10年目を迎えた広島ドラゴンフライズというクラブにとって、それを体現したのは今シーズンだけに限った話ではない。 2014年にBリーグの前身の一つであるNBLに参入した。HCに“ミスターバスケットボール”と称される佐古賢一氏、ACに大野篤史氏、選手では竹内公輔など豪華な面々を揃えた。しかし、プロ野球の広島東洋カープやJリーグのサンフレッチェ広島というプロスポーツチームが県内で高い人気を誇る中、観客が500~600人程度という試合もしばしば。設立以来の課題だった脆弱な経営面が課題となり、2016年のBリーグ開幕はB2でスタートした。 成績が低迷する中、朝山が選手兼ヘッドコーチを兼任することもあった。2015年からチームに籍を置く朝山は「その時期が一番きつかったかもしれない」とした上で、言葉を繋いだ。 「自分たちは成績云々より、クラブの経営面でB2への振り分けでした。そこからスタートして、何かアクションを起こしても思うようにいかない。自分がヘッドコーチを兼任したり、クラブが傾きかけたり。本当に苦しい事ばかりでした」 苦難続きの中、フロント側と言い合いになることすらあったという。 しかし2018年12月に転機が訪れる。運営会社が英会話のNOVAホールディングスの傘下に入ったことで財政面が改善。2020-21シーズンに初のB1昇格を果たすと、その後は投資フェーズに入った。ニック・メイヨやドウェイン・エバンス、中村、山崎など、実績のある選手や有望な若手をバランス良く獲得し、年々戦力を整え、B1昇格からわずか4シーズン目で頂点に立った。 朝山の「本当に苦しい事ばかりでした…」という言葉には、さらに続きがある。 「苦しい事ばかりでしたが、自分自身も含め、一つ一つの経験がチームの財産になっているのかなというふうに思います」 全ての苦難は「下剋上」に通ず。 今回の優勝は、一つのシーズンで達成したものではない。10年という歳月の中で、クラブ全体で築いてきた逆境への強さがもたらした栄冠なのだ。