【バスケ】全ての苦難は「下剋上」に通ず 初優勝の広島ドラゴンフライズ、10年に及ぶ茨の道で培った“逆境への強さ”
寺嶋負傷離脱も勢い、中村「優勝を信じない人はいなかった」
Bリーグにおいて、ワイルドカードから頂点まで駆け上がったチームは過去にもいる。2018-19シーズンのアルバルク東京と、2021-22シーズンの宇都宮ブレックスだ。ただ、この2チームはいずれもRSの勝率が7割を超え、今回の広島はちょうど6割(36勝24敗)。山崎が「広島がまさかここまで勝ち上がると思っていた人は、たぶん誰もいなかったと思います」と言ったように、「リーグ史上最大の下剋上」と言っていいのではないか。 実際、今季の広島はお世辞にも順風満帆と言えるようなシーズンではなかった。 群馬クレインサンダーズから新加入した山崎がシーズン中盤に入るタイミングで負傷離脱し、昨年12月には4連敗を喫するなどして勝率が一時5割を切った。年明けから少しずつ白星が先行するようになったが、3月上旬に今度はエースガードの寺嶋良が右膝の靭帯損傷などでシーズンアウトが確定的に。CS進出が困難な状況に追い込まれたかに見えたが、シーズン終盤にかけて島根や名古屋D、琉球という西地区の上位陣を次々となぎ倒し、勢いそのままにCSへ突入していった。 寺嶋が離脱した後、メインのガードとして殊勲の活躍を見せた中村は、シーズンをこう振り返る。 「いろいろなことがあってタフなシーズンでしたが、レギュラーシーズン終盤から互いを信じ合い、自己犠牲をして『誰かのために』という気持ちがここまで僕たちを強くしたと思います。誰一人として、優勝を信じていない人はいなかったです。そういった選手たち、スタッフ、ブースターとやり続けられたことを本当に誇りに思います」 アイシンシーホース(現シーホース三河)時代、JBLとオールジャパンで3度の優勝を経験している朝山も「寺島の怪我をきっかけにして中村がここまでの選手に成長した。一つ一つの出来事は単体で見るとマイナスですが、そういうことを力に変えていける時は、優勝する時の雰囲気なんです」と実感を込める。困難があっても全員が下を向かず、前を見続けた結果のチャンピオントロフィー獲得だった。