欧州組の確かな進化。「活躍の仕方が違う」と実感する原口元気も負けてられない「来年に勝負を賭けますよ」【インタビュー3】
「ストロングの部分だけで勝負できている」
日本代表時代は頭抜けた積極性と貪欲さを備えた年下の選手がゴロゴロいた。2022年カタール・ワールドカップは惜しくも最後の最後で落選の憂き目に遭ったが、若手だった堂安律(フライブルク)や久保建英(レアル・ソシエダ)らと共闘。最終的には堂安に8番を託し、彼がドイツ、スペインとの大一番でゴールを決めるに至った。 「律とは仲も良かったし、よく話しましたけど、彼はめちゃくちゃ自分を持っていて、自分で考えることのできる選手。今の代表はそういう選手が揃っていると思います。 実際、今の日本人選手は欧州5大リーグでの活躍の仕方が違う。たとえば、サコ君だったら本当はセンターフォワードをやりたいけど、生き残るために10番とか8番もやっていましたよね。それは自分も同じでした。オカちゃん(岡崎慎司)もゴール前で走り回っていたけど、自分のストロングだけで勝てる時代じゃなかったのかなと思います。 だけど、今はタケにしろ、(三笘)薫(ブライトン)にしろ、本当のストロングの部分だけで戦っているし、勝負できている。5大リーグに出ているという点で同じように見えるかもしれないけど、内容は全然違ってきているのかなと思いますね」 原口の見解は的を得ている。2010年代の欧州組は「献身性」「万能型」で評価される傾向が強かったが、2020年代に入ってからは「尖った武器」で使われるようになっている。三笘や伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)はその筆頭だし、デュエル王の遠藤航(リバプール)もそう。今季からは鈴木彩艶がセリエAでレギュラーになっている。時代はどんどん進んでいるのである。 「そういう流れもあるから、今の代表は自分が前回の最終予選を戦っていた3年前とは全然違うレベルに来ていると感じるんです。僕らの時代はワールドカップでベスト8を目ざそうとしたら、『番狂わせ』みたいなイメージしかなかったけど、今はベスト10に入るようなチームに近づきつつある。2026年の北中米ワールドカップは本当に実力でベスト8に初めてチャレンジできる大会になると思いますね」 原口がこう見ているのだから、キャプテンの遠藤が掲げるW杯優勝はあながち夢物語ではないのかもしれない。一段階レベルアップした日本代表で原口自身が今一度、プレーできる機会を得られれば理想的だ。 2023年のJ1で22ゴールをマークした大迫が森保一監督からお呼びがかからないのだから、非常に難易度が高いのは間違いないが、「現役である以上、代表を目ざす」という原口のスタンスは、長友佑都(FC東京)や岡崎、香川真司(C大阪)と一緒。 「今の自分は堂々とそうは言えないから、自分を取り戻して、パフォーマンスを上げていくしかない。来年に勝負を賭けますよ」と本人はギラギラとした闘志を燃やしている。 2025年の浦和は今季低迷したJ1で再浮上を果たさなければならないし、新方式に移行するFIFAクラブワールドカップもある。原口は極めて重要なこのシーズンで完全燃焼する覚悟だ。 「1年後の自分はどうなってるか分からないけど、とにかくこの挑戦は楽しみ。全力でやり切りたいと思っています」と語気を強める男がアタッカーとしてのキレを取り戻し、対峙する敵をキリキリ舞いしていく姿を心待ちにしたいものである。 ※このシリーズ了(全3回) 取材・文●元川悦子(フリーライター)