光を使って水から資源を作る「人工光合成」 大学や企業で研究進む
民間企業でも人工光合成の研究が進みつつあります。トヨタ自動車グループの豊田中央研究所は2011年9月、太陽光を用いて水とCO2から有機物を合成する人工光合成の実証に成功したと発表しました。同研究所によると、現時点で植物の光合成反応に匹敵する太陽光変換効率4.6%に到達しているそうです。このほか、東芝やパナソニック、富士通でも人工光合成の研究に取り組んでいます。 この人工光合成、いつ実用化されるのでしょうか。井上特任教授は、今から30数年後の2050年を目標年に設定しています。2020年ごろに研究の方向をある程度絞り込み、2030年ごろからの実証研究、2040年ごろからのインフラ整備を経て、2050年の段階で、人工光合成を基盤とするエネルギーシステムが社会のエネルギー需要の1/3以上をまかなえる体制を構築する、という構想を描きます。 思わず、「結構かかりますね」と言葉を返したところ、井上特任教授は、「実際に各家庭で水素を使って発電したり、燃料として使ったりするような時代の到来を想定すると、それくらいの時間がかかります」と説明。それだけに、「今の中高生には、自分たちが実現する、という気持ちを持って、この分野に入ってきてほしいですね」と、2050年ごろに壮年期を迎える今の若い世代に期待を寄せていました。 (取材・文:具志堅浩二)