「痛バッグ」が若者に大人気、トレンドが消費を加速
【東方新報】「自分の大好きなものを、みんなに知ってほしい」。山東省(Shandong)済南市(Jinan)に住むアイドルファンの黄思琪(Huang Siqi)さんは、外出する際に、バッジやぬいぐるみで飾られた「痛包」をいつも背負っている。「その日の気分に合わせて、痛包のデザインを変えることもあります。これらのアクセサリーはすべてアニメキャラクターが元になっているんです」と話す。 「痛包(痛バッグ)」は、アニメキャラクターのバッジやぬいぐるみなどのグッズで装飾されたバッグのことで、バッグの外側にある透明な部分を使って、持ち主が好きなアニメ要素を見せられるのが特徴だ。これによって、持ち主の個性をアピールできる。 近年、「痛包」は若者の間で大流行している。2024年のパリ五輪では、中国の飛び込み選手・全紅嬋(Quan Hongchan)選手がぬいぐるみやアクセサリーでいっぱいの「痛包」を持っていて話題になり、さらに注目を集めた。 SNSでも「痛包」は人気で、関連する話題は9億3千万回以上閲覧されている。投稿者の多くは、アニメが好きな若者たちだ。 「若者は精神的なサポートを求めていて、痛包を飾ることで幸せを感じたり、満足感を得たりしています。痛包を背負って外に出ることが、私たちにとって不安や孤独を和らげる最高の方法です」と「00後(2000年代生まれ)」の車車(仮名)は話す。痛包を背負って街を歩くことで、言葉を交わさなくても、同じ趣味を持つ人たちと共感できるという。「これは単なる趣味の表現じゃなくて、独特のファッションでもあります」と語る。 黄思琪さんや車車さんのように痛包を愛する若者が増え、二次元文化が広がるにつれて、トレンドショップやフィギュア専門店が次々と開店している。 中研普華産業研究院のレポートによると、2024年には中国の二次元市場の規模が1200億元(約2兆5019億円)に達し、世界最大の二次元市場になる見込みだ。消費者層は「00後」や「10後」だけでなく、「80後」や「90後」にも広がっている。 済南市のトレンドショップの店長である劉同(Liu Tong)さんは、「今年初めから、バッジやぬいぐるみ、キーホルダーなどの二次元グッズが売上の80パーセントを占めています。主な顧客は『00後』です」と話す。 「若者の個性的な商品への需要が、私たちのビジネスに新しいアイデアをもたらしました」と劉同さんは話し、今後は顧客が自分の好みに合わせてDIYできるコーナーを設け、ショップの体験を充実させたいと考えている。 今では、「痛包」は二次元の枠を超え、あらゆるものが「痛包」にできるというトレンドが広がっている。アニメに興味のない若者でも、いろんなデザインを使って、自分の感情や個性を表現できるようになっている。 記者がSNSを見たところ、学生は試験問題や先生の似顔絵を使って「受験痛包」をデザインしたり、社会人は「金運アップ」や「一攫千金」といったテーマで痛包を作ったりしていた。 山東大学(Shandong University)の社会学研究員である王元超(Wang Yuanchao)氏は、「痛包は若者が自分の趣味や愛情を表現する手段であり、彼らがアニメ文化やアイドル、特定のキャラクターに対する愛を示すものです」と話す。痛包は単なるバッグではなく、若者が感情を託すためのツールであり、感情的な価値を提供している。 王氏は、「痛包文化は、若者たちの間で独自のコミュニティを形成しています」と考えている。痛包は一種のシンボルとなり、同じ趣味を持つ若者同士が自然に共鳴し合い、共通の関心を持つ仲間を見つけることができるという。「このような共通の認識や仲間意識が、若者たちに自分の居場所を見つけさせ、彼らのソーシャルネットワークを広げています」と結論づけている。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。